コラム:カジノ偏重から脱却目指すマカオ、業界に重い経済負担

コラム:カジノ偏重から脱却目指すマカオ、業界に重い経済負担
 1月20日、世界最大のギャンブルセンター、マカオが観光業の多角化に躍起になっている。写真は2019年12月、マカオで撮影(2020年 ロイター/Jason Lee)
Katrina Hamlin
[香港 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
世界最大のギャンブルセンター、マカオが観光業の多角化に躍起になっている。マカオのカジノ産業収入は2018年、域内総生産(GDP)の約70%を占めた。ただ、当局がラスベガス・サンズやウィン・リゾーツといったカジノ運営企業に対し、劇場、アリーナ、ショッピングモールなどへの投資を増やすよう迫っていることには注意を要する。
カジノのコンセッション(営業権)を巡る次回入札が22年に始まるため、マカオ政府にとっては絶好のタイミングだ。莫大な利益が得られる営業権を目の前にぶらさげ、家族向けの娯楽など、もっと多様なサービスを提供するよう迫ることができる。
中国政府も強い関心を抱いており、習近平・国家主席は12月のマカオ訪問時に多角化を促した。
カジノにアメではなくムチを使おうとする国もある。ギャンブル産業の新顔である日本は、統合型リゾート施設(IR)にカジノ以外の娯楽施設の建設余地も確保するよう要請している。シンガポールは昨年4月の免許更新で、サンズとゲンティンからアリーナやテーマパーク、新たな商業施設を建設する合意を取り付けた。
サンズがラスベガスをイベントや展示会の拠点に変えたように、カジノ大手はこれまでも事業を分散してリスクヘッジする方法を心得ている。
しかしコストは大きい。サンズとゲンティンがシンガポールで合計70億ドルの事業拡張投資を約束したと報じられると、ゲンティン株は1日で10%近く急落した。
投資家が懸念するのも無理はない。
香港とマカオを結ぶ橋の開通で、昨年はマカオ訪問客が増えたが、新たな旅行者はギャンブルに関心を持っていない。昨年1―11月で訪問客が約13%増加したのに対し、カジノの収入は減少した。カジノ以外でも、訪問客1人当たりの支出額は昨年1―9月に20%減った。
中国の景気減速も影を落としている。18年上期にはウィン・マカオ<1128.HK>やサンズ・チャイナ<1928.HK>などのEBITDA(支払利息・税金・償却控除前利益)が25%以上増えた。しかし、19年上期はサンズが1桁台の伸びにとどまり、ウィンは減少した。需要が不透明な時期に新たな事業に散財するのは痛い。マカオ観光業の大改造は代償を伴いそうだ。
●背景となるニュース
*公式データによると、昨年1―11月のマカオ訪問客は、前年同期比12.7%増えた。
*昨年1―9月に訪問客1人当たりの買い物、宿泊、飲食、移動、その他カジノ以外の支出は前年同期比20.3%減少した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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