コラム:テスラがトヨタ抜く、マスク氏巨額報酬も説明しがたい株価

コラム:テスラがトヨタ抜く、マスク氏巨額報酬も説明しがたい株価
 7月1日、米電気自動車(EV)メーカーのテスラが午前の取引で一時、約5%値上がりし、時価総額は2100億ドル(約22兆5750億円)に到達、トヨタ自動車を抜き去った。写真は中国上海で会見するイーロン・マスクCEO。1月7日撮影(2020年 ロイター/Aly Song)
Antony Currie
[ニューヨーク 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米電気自動車(EV)メーカーのテスラが7月1日午前の取引で一時、約5%値上がりし、時価総額は2100億ドル(約22兆5750億円)に到達、トヨタ自動車<7203.T>を抜き去った。世界の自動車業界で時価総額首位を達成した。
電撃的な株価上昇でイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)のパフォーマンス・ボーナスも、まだ不相応かもしれないが、「オーバードライブ」の高速運転モードに入ることになる。
テスラ株の株価収益率(PER)はすでに長いこと、伝統的なガソリンやディーゼルエンジン車を柱とするライバル勢に比べ、はるかに高い水準で推移していた。
テスラ株は過去1年で400%もの上昇となり、フォード・モーターを追い越し、次にゼネラル・モーターズ(GM)、次にフォルクスワーゲン(VW)を抜き去り、今やリフィニティブのデータによれば2022年の利益見通しに基づくPERが69倍。対照的にトヨタは10倍をわずかに下回る。
テスラの現在の株価水準を説明するには実際のところ、同社の年間納入台数を昨年に何とか果たした40万台よりもはるかに多い何百万台も増やせるとか、あるいは走行コストの安いロボタクシーを大量に市場に投入できるとかいう可能性を最大限に信じることが必要になる。しかし、いずれもすぐに実現しそうには見えない。
しかしながら、テスラの企業価値はマスク氏への新たな巨額特別手当の支払いに向けて時計が回り始めている。テスラ株主は2年前、マスク氏のための10年がかりの成功報酬パッケージを承認した。成功次第で発行済み株式の12%、最大で総額600億ドル相当を与える内容。条件は時価総額と、売上高か調整後EBITDA(税・利払い・償却前利益)のいずれかでそれぞれ目標を達成することだ。
マスク氏はまさに1カ月少々前に、テスラの時価総額1000億ドル、年間売上高200億ドルの達成に基づき、12回分が可能なストックオプションの最初の支払いを受け取った。その後、時価総額はもう2カ所目の目標地点である1500億ドルをさっと通過、今日の地点に至った。
ただ、これをもってマスク氏が支払いを得るには、一時的な到達ではなく、6カ月間の平均ベースでもその好調さを維持するという結果を待つ必要がある。
リフィニティブ集計の市場予想に基づくと、売上高もEBITDも、年内に目標をクリアできるかもしれない。ただし、新型コロナウイルス対策の封鎖措置による売り上げへの影響で、見通しは不透明になっている。
マスク氏への次の特別手当支払いに生じる遅れは、投資家からすれば、少なくとも同氏の役員報酬が「先走る」可能性に対する多少の保険措置ということになるだろう。
●背景となるニュース
*テスラの時価総額は1日朝方の取引で2100億ドルに到達。初めてトヨタ自動車を抜き、業界首位に躍り出た。
*テスラは2018年、マスクCEOの報酬をその後10年間の株価や業績に連動させる制度を設定した。時価総額、売上高、調整後EBITDAの目標を達成すれば、マスク氏には1株350ドル前後で発行済み株式の1%を付与する。ストックオプション行使の回数は最大12回。
*テスラの取締役会は5月28日、時価総額が1000億ドル水準を維持し、年間売上高が200億ドル以上を記録したとして、マスク氏への初回支払いの条件が満たされたと認めた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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