アングル:懐疑派か日和見か、英首相候補ジョンソン氏のEU観

アングル:懐疑派か日和見か、英首相候補ジョンソン氏のEU観
6月11日、英与党・保守党の次期党首の有力補候補と見られているボリス・ジョンソン前外相は、欧州連合(EU)からの離脱を訴えるキャンペーンの「顔」だった。ロンドンの自宅を出るジョンソン氏(2019年 ロイター/Hannah McKay)
Andrew MacAskill
[ロンドン 11日] - 英与党・保守党の次期党首の有力補候補と見られているボリス・ジョンソン前外相は、欧州連合(EU)からの離脱を訴えるキャンペーンの「顔」だった。
だがジョンソン氏は、英国とEUの望ましい関係について、過去に矛盾する発言をしている。
これまでの主な発言を振り返った。
●2003年、自身がEUのファンであると発言
「私が超欧州懐疑派ということは全くない。ある意味では、ちょっとしたEUファンだ。もしEUがなかったとしても、われわれは似たようなものを発明しただろう」と英議会に語った。
●2013年、EU離脱は英国の問題の解決にならないと指摘
「われわれの問題のほとんどは、ブリュッセルのせいではなく、慢性的な英国の短期主義や不適切なマネジメント、怠惰やスキルの低さ、一時の満足を追うカルチャー、そして人的・物的資源やインフラへの投資不足からきている」と英紙デイリー・テレグラフに寄稿。
●2014年、EUを動物に例えるなら何かと同紙に聞かれて
「EUは、例えるならロブスターだ。EUはその仕組み自体、参加国に夕食会の場でロブスターを注文させるようにできている。会計は誰か他の国、通常ドイツが、支払ってくれると知っているのだ」
●2016年2月、国民投票を控え同紙に寄せたが掲載されなかったコラムで、EU残留を支持した理由について
「(EUは)すぐ手が届く市場であり、英国企業はもっと開発することができる。こうしたアクセスの割に、会費は比較的安い。なぜそれほど頑固に離脱したがるのか」と記した。ブレグジットを描いた書籍「オール・アウト・ウォー(全面戦争)」が明らかにした。
●2016年2月に同紙に寄せたコラムで、EU離脱支持に転じた理由について
「EUは公共政策のほとんど全ての領域に侵食してきており、ゆっくりと、目に見えない法的植民地化のプロセスが始まっている」とジョンソン氏は執筆。「こうしたEUルールの中には、単純にばかげているものもある。ティーバッグをリサイクルしてはいけないとか、8歳以下の子どもは風船を膨らませてはいけないだとか、掃除機の吸引力の上限などだ」
●2016年2月、同紙に寄せたコラムで、EUとの望ましい関係について
「私は実は欧州支持だ。クロワッサンをたらふく食べ、美味しいコーヒーを飲み、外国語を学んで外国人の女性と仲良くできるような欧州コミュニティなら大歓迎だ」
●2014年に出版した著書「チャーチル・ファクター たった一人で歴史と世界を変える力」で、EUがローマ帝国以降で最長の平和を達成できたことについて
「欧州共同体、今のEUは、(ローマの)アントニヌス朝時代以降で最も長い平和と繁栄の期間をもたらすことに一役買った」
●2016年5月、EUが旧ナチス・ドイツに似ているとする理由について
「ナポレオンやヒトラーなど多数の人がこれを試みたが、悲劇に終わった。EUは、違うやり方で同じことを試みようとするものだ。だが根本的に欠けているものがあり、それが永遠の問題だ。それは、欧州という概念についての基本的な忠誠心の欠如だ」とデイリー・テレグラフに語った。
●2018年7月、メイ首相のブレグジット協定案について
「自ら経済的属国に成り下がろうとするものだ。一部の同僚議員は、失敗協定をいま結んでおいて、後でそれを破棄して再構築できると考えているようだが、まったくのナンセンスだ」と英議会に語った。
●今年3月、メイ氏の離脱協定案を消極的ながら支持する理由について
「われわれはいま、現実にある選択肢から選択をしなければならない。この協定案に賛成票を投じることは非常に辛いが、今後欠陥を修正できればと思う」とツイッターに投稿。
●2012年、ユーロについて
「ユーロは破壊的なプロジェクトだ。成長は硬化的なペースでもたつく。いずれ爆発するが、いつになるか賭けをする気はない」とトムソン・ロイター主催のニュースメーカーイベントで語った。
●英国はどのような関係を築くべきかについて
「単一市場のみでいいだろう。これはEUの偉大な成果だ。社会関連の部分や漁業政策などは、なくて一向に構わない」
●合意なしで離脱する「ハードブレグジット」を選択すべき理由について
「警告が暗く、人々を震え上がらせようする努力が組織的であればあるほど、(市民は)気に留めず、一層決意を固くしてきた。合意なき離脱、又は世界貿易機関(WTO)のルールに従うものが、人々が考える離脱に近いものだ」とデイリー・テレグラフ紙のコラムに記した。
●首相としてどのような離脱戦略を取るかについて
「私が首相になれば、合意があろうとなかろうと、10月31日に離脱が実現する」と今月発表したビデオで語った。
「最終的な合意ができる前に(EUに対する清算金の)小切手を全部書くと同意しなければならないのは、すごいことだとずっと考えていた。良い合意を得る上で、金銭は優秀な溶剤であり潤滑剤だ」と、今月英紙サンデー・タイムズに語った。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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