コラム:サウジアラムコ、財務公表でも消えない独立性への懸念

コラム:サウジアラムコ、財務公表でも消えない独立性への懸念
 4月1日、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが、普通の会社に見えるように最善を尽くしている。写真は同社のマニファ油田。2015年1月撮影。提供写真(2019年 ロイター/Saudi Aramco/Handout via REUTERS)
George Hay
[ロンドン 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] - サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが、普通の会社に見えるように最善を尽くしている。1日には石油化学大手サウジアラビア基礎産業公社(SABIC)<2010.SE>の株式70%を690億ドルで取得するための初の社債発行に向け、469ページに及ぶ目論見書を公表した。
アラムコの数字は予想通り膨大だ。2018年の利益は1110億ドルで世界最大。借り入れが270億ドルあるにもかかわらず、手元資金は220億ドルにのぼる。公開情報がないため、これまで投資家はアラムコの富を推測するしかなかった。
問題は、こうした大きな数字だけで、海外投資家に100億ドル以上と予想される社債の購入を説得できるのか、投資家が事実上凍結状態のIPO計画を支持するのか、ということである。アラムコはジャーナリストのジャマル・カショギ氏殺害に関与したサウジの国有企業。SABICの案件は政府の干渉の危険性を浮き彫りにしている。
だが目論見書は、アラムコが少なくとも厳しい交渉を引き出せることを示している。長期にわたる交渉の末、アラムコはSABIC株取得費用の半分だけを、政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)に前払いすることで合意した。残りは20年と21年に支払われる。特別に10億ドルを支払わなければならないが、アラムコが容易に全額を支払うことができることを考えると、この取引に依然一定の独立性があることを示唆している。
目論見書のその他の内容も同様だ。アラムコは現在、政府に石油を固定価格で販売することで補償金を得て、売り上げの32%をロイヤルティーと税金で支払っている。この水準は16年は59%だった。公的部門の顧客の支払い分の補償もある。
ただこうしたことは、投資家が将来のIPOに飛びつくことを意味するものではない。アラムコが本当に独立していれば、SABICを買収することはなかったかもしれない。この買収の主な利点は、IPOが遅れてもPIFの資金を維持することだった。アラムコに対する強気筋は依然として固執すべき点がある。
●背景となるニュース
・サウジアラムコが1日公表した初の社債発行の目論見書によると、昨年のEBITDA(金利・税金・償却前利益)は2240億ドルで米アップルのほぼ3倍。
・PIFからSABIC株を690億ドルで取得するため社債を発行にあたり、これまで消極的だった財務内容の公表に踏み切る。
・格付会社のフィッチとムーディーズはアラムコをそれぞれAプラスとA1に格付け。国営企業であるため国債格付けと同水準。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

Opinions expressed are those of the author. They do not reflect the views of Reuters News, which, under the Trust Principles, is committed to integrity, independence, and freedom from bias.