コラム:ロシア疑惑決着のトランプ氏、関税撤廃で景気支えよ

コラム:ロシア疑惑決着のトランプ氏、関税撤廃で景気支えよ
 3月25日、モラー特別検察官が、2016年米大統領選でのトランプ陣営とロシアの共謀を認定しなかったことで、米国市場を覆うリスクは1つ取り除かれた。しかし投資家の心配材料は他にもある。写真はトランプ大統領。ワシントンで撮影(2019年 ロイター/Carlos Barria)
Tom Buerkle
[ニューヨーク 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - モラー特別検察官が、2016年米大統領選でのトランプ陣営とロシアの共謀を認定しなかったことで、米国市場を覆うリスクは1つ取り除かれた。しかし投資家の心配材料は他にもある。
米経済は警戒信号を発しており、企業の設備投資は盛り上がっておらず、債券市場ではリセッション入りの信号が点滅している。ここで関税政策を終了すれば、今後の見通しを覆う雲は1つ減るだろう。
トランプ大統領は2週間前、景気と雇用は「過去最高」だとツイッターに投稿した。第4・四半期の成長率は年率3.1%で、オバマ前政権下ではこれより高い成長率が3回記録されているため、ツイートはいかにも誇大広告だ。もっとも失業率は1960年代以来の最低水準に下がっており、2月の時間当たり賃金伸び率は前年比3.4%と、過去10年で最高だった。
しかし市場は、最高の局面が終わったのではないかと案じている。昨年はトランプ氏が進めた法人税減税がS&P総合500種構成企業の利益を力強く押し上げたが、リフィニティブのI/B/E/S予想によると今年は3%増にとどまる見通しだ。
しかも、減税にもかかわらず設備投資ブームは訪れていない。非政府部門支出の目安となる民間国内総投資は第4・四半期に実質7%増で、オバマ政権下の大半の時期を下回った。
関税、2月の寒波、政府機関の一部閉鎖、欧州と中国の景気減速が米国経済を圧迫した。ニューヨーク連銀とアトランタ地区連銀は、第1・四半期の成長率が年率1%強に減速すると予想している。22日の米債市場では、10年物国債利回りが3カ月物を下回る「逆イールド」現象が起こった。これは金融危機直前の2007年以来のことだ。
これでリセッション入りが決まったというわけではない。米連邦公開市場委員会(FOMC)が先週、利下げを休止し年内にバランスシートの縮小を停止する方針を示したことは、市場を一定程度支えるはずだ。しかし関税の問題は残っている。欧州と中国に対して関税を実施したり、その可能性をちらつかせていることは、依然として経済成長を脅かしている。トランプ氏は、ロシア問題をクリアしたことで政治的な立場がいくらか強くなった。今こそ関税問題で攻撃的なトーンを緩めるチャンスだ。
●背景となるニュース
・バー米司法長官は24日、ロシア疑惑の捜査報告書について議会に概要の書簡を送り、モラー特別検察官が2016年米大統領選でのトランプ陣営とロシアの共謀を認定しなかったと明らかにした。
・22日の米債市場では、10年物国債利回りが3カ月物を下回る「逆イールド」現象が起こった。金融危機直前の2007年以来。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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