コラム:中国華為、トランプ氏の予測不能性に光明も

コラム:中国華為、トランプ氏の予測不能性に光明も
 5月20日、トランプ米大統領の予測不能な行動が、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に利する可能性がある。写真は英レディングで2日撮影(2019年 ロイター/Toby Melville)
Gina Chon
[サンフランシスコ 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領の予測不能な行動が、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に利する可能性がある。ファーウェイは現在、クアルコムからアルファベット子会社グーグルに至る米サプライヤーからの製品供給を受ける道を実質的に断たれている。だが以前にファーウェイのライバルである中興通訊(ZTE)<000063.SZ>がこうした制裁を発動された後、トランプ氏が救いの手を差し伸べた。ファーウェイの方が制裁範囲が広いとはいえ、ZTEと同じ展開にならないとは言い切れない。
米商務省は先週、特別の許可なく製品を販売できない対象にファーウェイとその関連企業を追加。クアルコム、インフィニオン・テクノロジーズ、グーグルなどがファーウェイ向けに出荷停止や一部製品へのアクセス遮断を行った。これによってファーウェイは、特に中国国外で壊滅的な悪影響が及びかねない。グーグルの携帯端末用基本ソフト「アンドロイド」が利用できないため、スマートフォンの販売が大打撃を受けるだろう。
米当局は昨年、ZTEにも同種の措置を講じ、ZTEの株価は半分以下に下がった。しかしトランプ氏は、米中貿易摩擦を和らげる目的でZTEに対する制裁を解除したのだ。中国の習近平国家主席との会談を踏まえた動きで、その代わりにZTEは10億ドルの罰金を支払い、取締役の刷新も受け入れた。
トランプ氏がZTEにいったん制裁を科しながら撤回してしまったことは、一部議員の反発を招いたものの、議会でトランプ氏の決定を覆すのに必要な支持は集まらなかった。ZTEの株価も最終的に下落分のほとんどを取り戻した。
ファーウェイは制裁の標的としてZTEよりもずっと大物だ。米国の情報部門は何年も前からファーウェイ製品がもたらすセキュリティー面のリスクに警鐘を鳴らしており、制裁には超党派の賛成が得られている。だからトランプ氏が制裁を取り消そうとしても、より難しくなる。
それでもトランプ氏は、常に強硬派の側近と全面的に行動をともにしているわけではない。米中対立の激化は、トランプ氏が注視している金融市場を動揺させている。またZTEのケースと同じく、ファーウェイに製品を販売する一部の米企業は苦境に置かれる。例えばクアルコムやブロードコムの株価は20日午後に大幅に下がった。来年の大統領選に目を向ければ、そうした点がトランプ氏の考え方に影響を与えてもおかしくない。
トランプ氏がファーウェイへの制裁を解除すれば、議会の反発を招く恐れはある。とはいえ、議会がその決定を無効化するには相当な多数派を形成しなければならない。気まぐれなトランプ氏の手には、また1つ不確定要素が加わったといえる。
●背景となるニュース
・アルファベット子会社グーグルは、ファーウェイ向けの一部事業を停止した。ロイターが19日伝えた。ファーウェイは、グーグルの携帯端末用OS「アンドロイド」の更新を受けられず、ファーウェイの今後の世代の携帯端末はアプリ配信の「グーグルプレイ」、メールソフトの「Gメール」、動画投稿「ユーチューブ」などが使えなくなる可能性があるという。
・アルファベットの決定は、米商務省が16日にファーウェイとその関連企業をいわゆる「エンティティリスト」に追加したことを受けたもの。エンティティリスト対象になると、米企業は政府の特別な許可なしで製品を販売できない。
・インテルやクアルコム、ザイリンクス、ブロードコムといった半導体メーカーは従業員に対して、さらなる通知があるまでファーウェイに重要なソフトや部品を供給しないよう申し渡した、とブルームバーグが事情に詳しい関係者の話として伝えた。
・ZTEは昨年、トランプ大統領と中国の習近平国家主席の会談後に同じような制裁を解除された。ZTEは10億ドルの罰金を支払い、取締役会の刷新や法令順守監視人を10年間設置することなどを受け入れた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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