コラム:ゴーン被告、仏政府の「特別扱い」は期待できない訳
Liam Proud
[ロンドン 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕された日産自動車<7201.T>の前会長カルロス・ゴーン被告は4日、テレビ局とのインタビューで、フランス政府に擁護を求めた。しかし1市民が求め得る最低の水準を超える擁護をフランス政府に望んでも期待外れとなりそうだ。フランスにとってはゴーン前会長よりもルノーを優先すべき強力な経済的理由があるからだ。
自分の役員報酬を有価証券報告書に少なく記載した金融商品取引法違反容疑などで昨年11月に逮捕された前会長は、100日以上にわたり東京拘置所に拘留された後、3月6日に釈放されたばかりだった。前会長は無実を主張しており、4日放映されたフランスのテレビ局とのインタビューで、フランス政府に対し自分のフランス市民としての権利を守ってほしいと訴えた。
ただ、前会長が特別扱いを与えられることはなさそうだ。ルメール財務相は4日、前会長は推定無罪として扱われるべきで、フランスの領事保護を受けているとしたが、フランス政府が15%出資するルノーの運営が政府の責任だとも述べた。
ルノー株は保有する日産の43%株の評価が大幅に割り引かれていることが響き、他の自動車メーカーに対して見劣りする水準で取引されている。ルノー株の評価額が他のメーカー並みなら、仏政府の持ち分の評価額はもっと高くなる。ルノーが保有する日産株は、市場での評価額が138億ユーロ相当。ルノーの中核利益はライバルである仏プジョーの6倍で、日産株の評価額とこの中核利益を合わせれば267億ユーロ相当と、ルノー株の足元での評価額を50%ほども上回る。フランス政府の持ち分の評価額も13億─28億ユーロ押し上げられる計算だ。
しかしルノーが日産株について投資家から高い信認を獲得するには、少なくとも両社が不可逆的なコスト削減策か、より優れた事業統合を図るための経営戦略に合意する必要がある。しかし、前会長の罷免で両社間の信頼感の欠如が露わになっており、当面こうした展開は見込み難い。ルメール財務相の政治的資源は、前会長が最小限必要とすることよりも日産の怒りを鎮めるのに使われる公算が大きい。
●背景となるニュース
・東京地検特捜部は4日、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告を会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕した。ゴーン被告は昨年11月、自分の役員報酬を有価証券報告書に少なく記載したとして金融商品取引法違反容疑で逮捕され、その後、同法違反容疑と会社法違反(特別背任)の容疑で再逮捕された。起訴後、今年3月6日に保釈された。
・ゴーン前会長は4日放映されたフランスのテレビ局とのインタビューで、自身は無実だと改めて主張、フランス政府に擁護を求めた。前会長は、テレビ局TF1とLCIに対し「私は戦いを続けている。私は無実だ。つらいことは認めなければならない。フランス政府は私を擁護してほしい。市民としての私の権利を守ってほしい」と述べた。
・フランスのルメール財務相は4日のBFMテレビで、ゴーン前会長はフランスの領事保護を受けており、推定無罪として扱われるべきだと述べた。また、ルノーの円滑な運営を確保することが自分の責任だと述べた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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