焦点:欧州決算シーズン、株価回復期待に水差す感染再拡大

焦点:欧州決算シーズン、株価回復期待に水差す感染再拡大
10月15日、欧州株は第3・四半期の企業決算を好感して上昇するとの期待があるが、欧州各国で新型コロナウイルス感染症が再拡大して制限措置が取られ始め、上昇に水を差す恐れが出てきた。フランクフルトの証券取引所で14日撮影(2020年 ロイター)
[ミラノ/ロンドン 16日 ロイター] - 欧州株は第3・四半期の企業決算を好感して上昇するとの期待があるが、欧州各国で新型コロナウイルス感染症が再拡大して制限措置が取られ始め、上昇に水を差す恐れが出てきた。
ドイツ、フランス、英国など欧州の大国はこぞって夜間の外出や集会の制限など、新たな措置を発表した。
夏場にロックダウンが解除されて経済活動が活発化したことが楽観論を呼び、決算シーズンを機に、欧州株は数カ月続いた横ばい状態から抜け出すとの期待が高まっていた。
欧州全域の株価指数STOXX600<.STOXX>は、コロナ禍が広がった3月に約40%急落。その後持ち直したが、年初からはなお11%下落した水準にある。
オッド・BHF(パリ)の株式ストラテジー責任者、シルベン・ゴイヨン氏は「大きな視野で見ると、第3・四半期は回復基調の中に位置付けられる」と指摘。「期待は高まっており、経済見通しは上方修正が続く可能性はまだ十分にある」と述べた。
リフィニティブI/B/E/Sのデータによると、STOXX600社の第3・四半期決算は、前年同期比で平均36.7%の減益が予想されている。
第2・四半期は51%の減益だった。クレディ・スイスのグローバル株式ストラテジー責任者フィリップ・リジバッハ氏は「(第3・四半期は)前期よりましだが、依然としてかなり悲惨だ」と話した。
第3・四半期決算は回復の兆候を示しそうだが、投資家が強く注目しているのは第4・四半期および来年の業績見通しだ。
見通しについてのコメントでは、同期決算を締めた後の数週間に事業がどのように推移したかや、欧州連合(EU)と英国の貿易交渉が決裂した場合の影響が、特に注視されるだろう。
企業のコスト管理や、ユーロ高の悪影響への対処法も吟味されることになりそうだ。
資産運用会社カルミニャクのケビン・ソゼット氏は、欧州優良企業の決算が予想を上回れば「株価上昇の触媒」になるかもしれないと話した。
<逆風から追い風へ>
世界第3位の広告会社、仏ピュブリシスや独化学メーカーのコベストロ<1COV.DE>などが既に発表した決算は、景気回復の証拠を示しているようだ。
仏高級ブランド大手LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)も高級バッグ「ルイ・ヴィトン」の販売が回復し、予想よりは小幅な減収にとどまった。
独自動車大手ダイムラーも、9月に高級車の販売が予想以上に持ち直し、決算が予想を上回った。
欧州株は景気循環の影響を受けやすいセクターが大きな地位を占めるため、巨大IT企業の存在感が大きい米国などに比べ、利益と株価が景気変動とより密接に結びついている。
例えば経済成長を忠実に反映しやすいエネルギー株と金融株は、第3・四半期に利益が81.6%と38.6%、それぞれ減少する見通しだ。
こうしたバランスの違いから、米S&P500種総合株価指数が年初から7%上昇しているのと比較して、欧州株は低迷している。しかし、ひとたび有効なワクチンが実用化されたり、米国で大型の景気対策が承認されたりして経済活動が本格再開すれば、この構図は欧州株の追い風に転じるかもしれない。
クレディ・スイスのリジバッハ氏は「景気が重圧を受け続けている間は、成長セクターの不在が欧州株を傷つけるだけだ。しかし同時に、景気回復が続けば追いつく余地がかなり大きいだろう、とも言える」と語った。
第3・四半期の米企業決算は減益幅が18.9%にとどまり、欧州企業は後れを取る見通し。米国で大きな割合を占める巨大IT企業が、コロナ禍による巣ごもり経済の恩恵を受けたことが背景にある。
(Danilo Masoni記者、Julien Ponthus記者)

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