コラム:香港取引所のLSE買収提案、背景に中国資本統制への鋭い目

コラム:香港取引所のLSE買収提案、背景に中国資本統制への鋭い目
 香港取引所はロンドン証取に買収を提案。写真はロンドン証取。2018年8月23日、ロンドンで撮影(2019年 ロイター/Peter Nicholls)
Christopher Beddor
[香港 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国政府は政治通の企業幹部でさえ惑わせてしまう。ロンドン証券取引所(LSE)のデービッド・シュワイマー最高経営責任者(CEO)は、中国経済の開放が進むとの見通しを示した。ところが、対する香港取引所(HKEX)<0388.HK>の李小加(チャールズ・リー)CEOは、それとは正反対の見方に基づいてLSEに大胆な買収を仕掛けた。過去の経緯に照らせば、中国の資本統制に対する目は李氏の方が鋭そうだ。
昨年LSEのCEOに就いた元バンカーのシュワイマー氏は今週、中国の資本統制は「ゆっくりと、しかし確実に取り除かれつつある」と語った。同じ会合に出席した李氏の見解は異なる。中国が資本規制を緩和する言われ始めて20年ほど経つが、「われわれはあと20年間、同じ話題を続けることになるだろう」と述べたのだ。
この討論は両取引所の戦い、そして李氏が提案して拒否された370億ドルのLSE買収計画の行方にとって意味深い。シュワイマー氏の言う通り、中国政府が資本の開放を進めるのなら、上海との結び付きを深めることがLSE株主にとって得策かもしれない。しかし、資本統制が予見可能な将来維持されるという李氏の見方が正しいとすれば、既に中国本土市場と太いパイプのある香港と手を結ぶ方がましに見える。
過去の経緯は李氏に有利だ。中国の資本市場開放は何年も前から浮上しているが、事あるごとに政策当局が障壁を維持してきた。国境を越えた資金の流れが強まれば、人民元相場や国内金融産業が不安定化しかねないとの懸念からだ。
事実、2015年以来、資本統制は強化の流れにある。希望的観測は実現しないという李氏の指摘は正しい。中国市場へのアクセス拡大を求めてきた多くの西側企業幹部もうなずくことだろう。
だからといってHKEXとLSEを統合する李氏の方程式が必ずしも適切というわけではない。例えばHKEXによるロンドン金属取引所(LME)の買収は看板倒れだった。LSEには金融情報会社リフィニティブの買収という別の計画があるし、HKEXによる買収は政治・規制当局から相当大きな抵抗に遭うだろう。それでも、中国がしぶとく資本統制を続けるという李氏の指摘の正しさに変わりはなさそうだ。
●背景となるニュース
*香港取引所(HKEX)の李小加CEOは24日のSibos会議で、LSEと手を組めば中国の富という「最後のフロンティアが解き放たれる」と主張。「今は大きくなることを考える時で、世界が東西に二極化しつつある局面にあってグローバルになる機会だ」と語った。
*HKEXは11日、現金と株式の組み合わせによるLSEの買収を提案した。買収価格はLSEの企業価値を約300億ポンドと評価する水準。LSEは13日に提案を拒否した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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