コラム:香港問題、米中ゲームの危険なピースに

コラム:香港問題、米中ゲームの危険なピースに
 11月19日、香港問題は通商協議をめぐる米中の駆け引きにとって、単なる手駒ではなくなった。写真は香港理工大学のキャンパス内に散らばった傘と、その向こうに立つ警察官ら(2019年 ロイター/Thomas Peter)
Jeffrey Goldfarb
[香港 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 香港問題は通商協議をめぐる米中の駆け引きにとって、単なる手駒ではなくなった。5カ月以上続く混乱が新たな展開を見せ、国際的に注目度が増している。米議会はデモ隊への支持を表明し、トランプ大統領にも同調するよう圧力を強めている。同大統領にとって最も重要な中国の習近平国家主席との交渉事を危うくするかもしれない。
デモ隊側が立てこもる香港理工大では激しい攻防が続き、警察が包囲。香港情勢の緊迫は新たな段階に入った。
一方、香港高等法院(高裁)が18日、デモ参加者がマスクなどで顔を隠すことを禁止する「覆面禁止法」を違憲と判断。中国政府は19日、香港の裁判所に合憲性判断の権限はないと表明し、状況はさらに深刻化している。
中国政府の強硬姿勢で、香港に高度な自治を認める「一国二制度」がむしばまれているとの懸念がさらに高まるだろう。中国は1997年の香港返還に当たり、50年間は香港に「一国二制度」を認めると約束していた。
米議会では既に、香港を支持し中国に制裁を加える機運が高まりつつある。上院は19日、中国が香港に高度の自治を保障する「一国二制度」を守っているかどうか米政府に毎年検証を求める「香港人権・民主主義法案」を全会一致で可決した。米下院は同法案を可決済みだ。
トランプ氏はこの問題に気乗り薄だが、議会ではトランプ氏の拒否権を覆すのに十分な支持が集まるかもしれない。
共和党の上院トップ、マコネル院内総務は18日、天安門事件を引き合いにして香港理工大の状況を戦地に例え、法案を支持した。またトランプ氏に「香港情勢についてはっきりと自分で物申すのをためらわないよう」進言もした。
これはトランプ氏にとって難しいかもしれない。きつい言葉を使えば、香港政府の林鄭月娥行政長官への支持を公言している習氏を刺激するリスクがある。中国は、米議会で法案が成立すれば報復措置を取ることもちらつかせる。
トランプ氏は大統領選対策として中国との通商合意を切望している。弾劾公聴会から国民の気をそらす方策を探してもいる。ところが米中通商協議はあまり進展が見られず、米中両国は関税などの問題で合意に達するのに苦労しているところだ。そんなときに今の香港問題は、米中通商戦争のゲームで一段と危険なピースになるばかりだ。
●背景となるニュース
*香港高等法院(高裁)は18日、デモ参加者がマスクなどで顔を隠すことを禁止する「覆面禁止法」は違憲との判断を示した。
*これに対して中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は、香港の裁判所には「覆面禁止法」などの合憲性を判断する権限はないと表明した。新華社が19日伝えた。
*一方、香港・九竜地区の香港理工大では17日以降、デモ隊と警察のにらみ合いが続いている。火炎瓶や催涙弾をかいぐぐって、一部デモ参加者はキャンパスから脱出するなどした。
*米上院は19日、中国が香港に高度の自治を保障する「一国二制度」を守っているかどうか米政府に毎年検証を求める「香港人権・民主主義法案」を全会一致で可決した。下院では既に可決されており、今後上下両院の調整を経た上で、トランプ大統領に送付される。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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