コラム:イタリア債務問題、今秋にも再燃か

コラム:イタリア債務問題、今秋にも再燃か
4月10日、イタリアの債務を巡る厄介な問題がまた浮上してきそうだ。財政緊縮を嫌っている同国政府は9日、今年の経済成長率が当初楽観していたような1%よりもずっと低くなり、ゼロに近いプラスにとどまると表明した。写真はイタリア国旗。ローマで2018年6月撮影(2019年 ロイター/Tony Gentile)
Lisa Jucca
[ミラノ 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - イタリアの債務を巡る厄介な問題がまた浮上してきそうだ。財政緊縮を嫌っている同国政府は9日、今年の経済成長率が当初楽観していたような1%よりもずっと低くなり、ゼロに近いプラスにとどまると表明した。
予想通りなら財政赤字の対国内総生産(GDP)は2.4%に高まり、欧州連合(EU)に約束した2%程度を達成できなくなる。公的債務の対GDP比も過去最高を更新するだろう。
イタリアにとって幸いなことに、欧州連合(EU)欧州委員会はブレグジット(英国のEU離脱)問題や、5月下旬の欧州議会選、そしてユーロ圏全般の景気低迷に関心が集中している。こうした課題山積のおかげで、どうやら今年はイタリア政府がEUから、全面的な景気後退(リセッション)をもたらしかねないような予算削減を要求される公算は乏しい。
しかしイタリアの債務問題は、政府が来年予算案を提示する今年秋に再び姿を見せるだろう。経済が停滞しているため、政府は来年の付加価値税(VAT)増税を避けながら債務を抑制しつつ、公約の所得減税を実施するのは一段と難しくなる。増税回避と所得減税は有権者の支持を集めているものの、350億ユーロと見積もられる歳入不足を歳出削減で穴埋めできなければ、公的債務と財政赤字が拡大するのは必至だ。財政悪化の兆しが少しでも見えれば、債券市場の警報装置が再始動するとみられる。
ブレグジットによって、イタリア政府は人気を失うか、それとも新たな金融市場の混乱を誘発するかというどちらも受け入れがたい選択をすることを一時的に逃れられたとしても、現実を隠しきるのは不可能だ。
●背景となるニュース
*イタリア政府は9日、今年の成長率見通しを当初の1%から、ユーロ圏で最も低い0.2%に引き下げた。
*今年の財政赤字の対GDP比は2.4%と予想しており、EU欧州委員会に昨年約束した2.04%の維持は達成できなくなる。公的債務の対GDP比は過去最高の132.6%になるという。
*イタリア政府は来年、230億ユーロ相当の付加価値税(VAT)増税を避けながら、同時に120億ユーロ規模の所得減税を実施したい考え。これらによって生じる歳入不足を歳出削減によって穴埋めできなければ、来年の債務がさらに膨らむ恐れがある。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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