コラム:共和党「トランプ対抗馬」出るか、20年大統領選の行方

コラム:20年米大統領選、共和党から「トランプ対抗馬」出るか
1月14日、米上院議員としての就任宣誓に臨む2日前の1月1日、ミット・ロムニー氏はワシントンポスト紙に、トランプ大統領が「大統領という重責にふさわしくない」との懸念を示す論説を寄稿した。写真は9日、米議会で共和党指導部に囲まれるトランプ大統領(2019年 ロイター/Leah Millis)
Lincoln Mitchell
[14日 ロイター] - 米上院議員としての就任宣誓に臨む2日前の1月1日、ミット・ロムニー氏はワシントンポスト紙に、トランプ大統領が「大統領という重責にふさわしくない」との懸念を示す論説を寄稿した。
とはいえ、2012年に共和党の大統領候補指名を受けたロムニー氏は、特に大胆なことをやってのけた訳米上院議員としての就任宣誓に臨む2日前の1月1日、ミット・ロムニー氏はワシントンポスト紙に、トランプ大統領が「大統領という重責にふさわしくない」との懸念を示す論説を寄稿した。ではない。彼のコラムはおおむね、トランプ氏の直情型の性格や国際関係について、多くの共和党関係者が以前から感じつつも、積極的な取り組みを約束するには至っていない懸念の「焼き直し」に過ぎなかった。
ロムニー氏のコラムには、「トランプ以前」の大統領候補にとっては定番だった発言が見られた。
「わが国の将来について、私は依然として楽観的だ。イノベーションの時代において、米国民は卓越している。さらに重要なのは、米国民の心に高貴な本能が宿っていることだ」 
ロムニー氏はその後、トランプ氏に対抗して出馬する予定はないが、必ずしも同氏を支持するわけではないと述べている。ロムニー氏のコラムを読むと、大統領候補指名に向けた予備選で共和党内の誰がトランプ氏への挑戦者になり得るかという話題のなかで、少なくとも同氏の名前は浮上しないと考えざるを得ない。
共和党内から誰かがトランプ氏に対抗して出馬するだろうという発想は目新しいものではない。
予備選でトランプ氏に挑戦するという考えは、多くの中道派だけでなく、いかに少数であるとはいえ、トランプ氏に対する批判を続ける保守派にとっても、非常に魅力的である。予備選で成功を収めれば、トランプ政権という実験に終止符を打つことにつながるだけでなく、米国の政治システムに対する永続的なダメージを抑え込み、トランプ政権の進んできた方向から共和党を遠ざけることさえ可能かもしれない。
トランプ氏への挑戦者が共和党予備選に出馬することを求める多くの評論家や政治アナリストを含め、政界関係者の多くはこうした展開を期待するだろう。
だがこのシナリオには問題がある。共和党がどれほど「トランプ流」に合わせて作り変えられてしまったかを見過ごしているからだ。予備選でトランプ氏に挑戦する候補者は、激しく叩かれ、結果的にトランプ氏による党内支配を強めるだけになってしまうだろう。
トランプ氏本人の党内での人気は非常に高い。世論調査会社ギャラップによれば、自らを共和党支持者であると考える人のあいだでのトランプ氏の支持率は、大統領に就任して以来、77%を下回っていない。2018年には最低でも81%であり、ほとんどの週はこの数値を大幅に上回っていた(対照的に、全米支持率は就任以来平均39%である)。
現職の大統領を予備選で葬り去ることは至難の業だ。ここ数十年でそれを達成したのはただ1人、1968年の民主党ニューハンプシャー州予備選でジョンソン大統領(当時)に肉薄し、ジョンソン大統領に撤退を決意させたマッカーシー上院議員だけである。
自党の支持基盤から愛されている大統領に予備選で挑戦して打ち負かすのは、ほぼ不可能だ。共和党内におけるトランプ氏の人気は、共和党の有権者と一部の共和党エリートとのあいだの大統領に関する考え方の違いを浮き彫りにしている。テレビや人気政治サイトでトランプ氏を批判する共和党関係者は多いが、彼らの姿が見られるのは、そうした舞台だけなのだ。
世論調査だけでなく、2016年以降、共和党の予備選ではトランプ派の候補者が勝つケースがほとんどで、共和党の連邦議員は、議席を維持するためにトランプ支持の有権者の歓心を買わざるをえない場合が多い。共和党上院議員のなかで最も率直なトランプ批判を展開していたジェフ・フレーク氏でさえ、もし自分が再選を目指していたならば、いくつかの問題についてトランプ氏を怒らせるような立場をとらなかっただろうと認めている。
貿易や外交などトランプ氏と共和党主流派の意見が異なる政策については、依然として共和党指導者のあいだで分裂が見られるが、これらは共和党内の予備選において多くの有権者の動向を左右するようなテーマではない。
先月、大きな注目を集めないようなやり方で、再選をめざすトランプ陣営と共和党全国委員会(RNC)は、2020年大統領選に向けて、この2つの組織の実質的に1つに統合するための構造を作り始めた。政治サイト「ポリティコ」の報道によれば、トランプ陣営とRNCが、双方の実働部門と資金調達部門を単一の組織に一体化させる計画だという。
これは、トランプのRNC支配を確実にするも同然であり、予備選でトランプ氏に挑んで成功するどころか、インパクトを与える可能性さえ、いっそう低下してしまう。こうした背景を考えれば、RNCのマクダニエル委員長がロムニー氏のコラムについてツイッターで「残念で非生産的」と論評したのも意外ではない。
トランプ氏が共和党の候補指名獲得に向けて予備選を戦う可能性は恐らく残っているが、同氏に挑戦する候補が誰であれ、大敗を喫するだけでなく、党をトランプ路線から引き離そうとどれほど試みても失敗に終る可能性が高い。
こうした理由があるからこそ、トランプ氏に挑戦する可能性がある人物として最も頻繁に名前が挙がるのは、アリゾナ州のフレイク氏や、前オハイオ州知事のケーシック氏など、キャリアの後半にさしかかった人物なのだ。
党内での将来があるクルーズ上院議員(テキサス州)やルビオ上院議員(フロリダ州)など、多くの主要テーマについてトランプ氏と意見を異にし、以前はトランプ氏の言動や倫理観について懸念を表明していた人々は、トランプ氏に挑戦し、それによって党内での立場を損なうことは考えていない。
この2年間で、共和党は「トランプ党」になってしまった。主要メディアに仰々しい論説コラムが発表されようと、この現実は変わりそうにない。
*筆者はニューヨークとサンフランシスコを拠点とする政治アナリスト兼研究者です。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
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