コラム:日産経営陣、ルノーとの統合拒否は得策か

コラム:日産経営陣、ルノーとの統合拒否は得策か
5月13日、もしハンドルを握るドライバーが車を間違った方向に進めているなら、後部座席からあれこれと口を出すことが有効だ。写真は日産とルノーのロゴ。仏サンタボルドで1月撮影(2019年 ロイター/Christian Hartmann)
Liam Proud
[ロンドン 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - もしハンドルを握るドライバーが車を間違った方向に進めているなら、後部座席からあれこれと口を出すことが有効だ。日産自動車<7201.T>の場合は、物言う投資家が現れれば、西川廣人社長の「迷走」を止めることができるだろう。
今のところ日産が走ってきた道のりは見るに堪えない。日産は仏ルノー株15%を保有し、ルノー側は日産株43%を持つ資本関係を築いているが、日産が前会長カルロス・ゴーン被告の取締役を解任して以降、西川氏はルノーとの統合を棚上げしてしまった。複数の報道によると、同氏はルノーのスナール新会長の統合提案をはねつけ、交渉することさえ拒んでいる。
これは間違っている。第1の理由としては、日産は収益力が弱いので、ルノーとの関係強化が妥当なことが挙げられる。リフィニティブがまとめた予想平均に基づくと、日産は来年度に売上高の3.9%しか営業利益に転じることができない見通し。世界的な自動車メーカーの利益率は平均6.6%だ。
第2に、資本を共有すれば、電気自動車や自動運転車に対してより適切な投資が可能となる。例えば日産が持つルノー株は、時価総額のほぼ1割に相当するとはいえ、影響力を有せずに恐らく売却もされないので、投資家はその価値を全面的に認めていない。
一方で日産がアグレッシブな姿勢へと移行する余地は残されている。足元では日本の企業風土は株主によって徐々に風穴を開けられつつあるのだ。今年になってバリューアクトはオリンパス<7733.T>の取締役会に1つ席を確保したし、LIXIL(リクシル)<5983.T>の怒れる株主グループが圧力をかけて経営トップが退陣を表明する事態も起きた。ただ日産については日本政府の反発というもう1つの複雑な事情が存在する。日本政府は雇用を守ることに必死なゆえに、ルノーの方針に強い発言権を持つフランス政府の出方を警戒している。
それでも日産が統合に踏み切れば、その見返りは非常に大きくなる可能性がある。BREAKINGVIEWSの計算では、ルノーと日産は相互に受け取る収入を除くベースで今年、およそ46億ユーロを稼ぎ出すとみられる。統合効果を控えめに合計売上高の1%、日本の税率を23%とした上で、トヨタ自動車<7203.T>とプジョーの平均株価収益率(PER)の6.7倍を先の予想純利益に当てはめてみると、両社の持ち合い分を除く株式の価値は420億ユーロ、つまり現在より50%前後も大きくなる。こんな状態なら、大胆な物言う株主が西川氏にいくつかの提言をしたいと思ってもおかしくない。
●背景となるニュース
*4月26日の日本経済新聞によると、ルノーは日産自動車に共同持ち株会社方式による経営統合案を正式に提案する見通しだ。この提案には両社が役員を同数指名し、持ち株会社の拠点をシンガポールなど欧州と日本以外に置くことなどが盛り込まれた。情報源は明らかにされていない。
*日経新聞の報道では、日産は4月12日にルノーからの統合の打診を拒否した。ルノーは現在日産株を約43%、日産はルノー株15%をそれぞれ保有するが、日産側にルノー株主総会での議決権はない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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