アングル:福島第一の汚染水どう処理、五輪前に注目される安全性

Aaron Sheldrick
[大熊町 21日 ロイター] - 地震による津波ですべての電源を失い、炉心溶融(メルトダウン)事故を起こしてからまもなく9年、福島第一原発では今も防護服に身を包んだ作業員ががれきを撤去していた。
ロイターは1月中旬、現地を取材した。放射線量が極めて高いエリアでは、遠隔操作の大型クレーンが排気筒を解体する一方、使用済み燃料の取り出しが進められていた。次々と増える汚染水の貯蔵タンクにも案内された。
作業に従事する約4000人は、多くが防護服を着ている。しかし、350平方メートルの広大な敷地の9割以上は放射線量が低いとされ、特別な装備は不要という。
記者は写真撮影を厳しく制限され、作業員と話すことを禁じられた。
解体作業は10年近く進められているが、東京五輪・パラリンピックの開催を半年後に控え、福島原発の安全性に改めて関心が集まっている。
「トラブルなどが発生した場合には、悪い情報も含めて速やかに発信するようにしている」と、現地で取材に応じた東京電力のリスクコミュニケーター、二本柳鑑氏は語った。「原因などについては、可能なかぎり説明して、対策をその都度実施している」
解体作業の障害になっているのが、溶けて固まった燃料デブリの冷却などで発生した汚染水。解決までに数十年かかるとみられるこの問題は、周辺国を不安がらせている。
日本政府は2019年12月、汚染水の処理対策として、希釈して海に放出する、大気中に蒸発させる、その併用の3案に絞ることを有識者委員会に提案した。
数カ月以内に結論が出ても、完了までには何年もかかると専門家は指摘する。
「オリンピックに向け、地元にだけでなく、海外、とりわけ外国から来る人たちに情報を公開する必要があると考えている」と、東京電力広報室の原城二氏は言う。
東京電力は英語でフェイスブックとツイッターを始めている。韓国語と中国語でも情報提供を準備しているという。
韓国は東京五輪に参加する選手団のために放射能測定器を用意し、食材を日本に持ち込む計画を立てている。
野球とソフトボールは原発から約60キロ離れた福島市で行われる。聖火リレーは、約20キロ離れたJヴィレッジからスタートし、原発の近くも通過する。
サッカーのトレーニング拠点として再開しているJヴィレッジは、事故後に対応拠点として使われた。環境保護団体のグリーンピースは昨年12月、この周辺で国の除染基準を超える放射線レベルの地点が見つかったと発表した。
安倍晋三首相は東京五輪の招致演説で、第一原発の事故は「アンダーコントロール(制御状態にある)」と宣言した。
日本政府は2016年、第一原発の廃炉や除染、賠償などの総費用は、21兆5000億円になるとの見通しを示した。年間の国家予算のおよそ5分の1に相当する。
(翻訳:久保信博、編集:山口香子)

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