アングル:「折り畳みスマホ」元年か、成熟市場の起爆剤に期待

Paul Sandle
[バルセロナ 25日 ロイター] - 似たような製品が並ぶ市場を揺さぶり、販売をテコ入れしようと、メーカー各社はスマートフォンの新しい形を模索している。
そうした中、2月下旬に開かれたバルセロナのモバイル機器見本市「モバイル・ワールド・コングレス」で、未来のスマホは画面が曲がって折り畳める端末という流れが出来上がった。
しかし、中国の華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]が披露した「MateX」に触れてみたいと思った来場者は、すぐがっかりすることになった。次世代通信規格の5G対応とはいえ、スクリーンを外側にして折り畳むこの端末の価格が2299ユーロ(約29万円)と発表されると、どよめきが起き、次にため息がもれた。
すでに韓国サムスン電子<005930.KS>が発表していた折り畳みスマホ「ギャラクシーフォールド」をも上回る価格だ。4月に発売されるギャラクシーフォールドは1980ドル(約22万円)。バルセロナではガラスケースに入れられ、まるで美術品のように展示されていた。
手の届きにくい価格で、手で触れられない形で製品を発表した姿勢を見れば、両社とも普及モデルの開発を終えていない可能性がある。それでも、2019年は「折り畳みスマホ元年」として記憶されることになると、調査会社CCSインサイトのベン・ウッド氏は予測する。その上で、この新しい形はまだ黎明(れいめい)期にあると付け加えた。
「われわれはまだ、画面が折れ曲がるデバイスの石器時代にいる。この10年、似たようなスマホばかりが登場してきたが、全く新しい実験の時代になる」
サムスンの端末はファーウェイと逆で、スクリーンを内側に折り畳む方式を採用した。外側に小さなスクリーンを備え、閉じているときはそこを使う。 サムスンで欧州の製品・販売戦略を担当するマーク・ノットン氏は、「(スマホを)長持ちさせるためには、これがベストな解決法だと考えた」と、ロイターに語った。
ユーザーは今あるスマホの機能に満足しているが、メーカーは革新的なモデルで買い替えを促し、減少する販売を反転させようとしている。
他のメーカーも折り畳みモデルを投入する見通しだが、2019年にはまだ主流にはならないと、コンサルタント会社カナリーズは予測する。今年発売されるのは超高級機種のみで、予想出荷台数は200万台に満たないと分析する。
米調査会社ガートナーによると、スマホ市場は2018年に1.2%縮小した。2019年は、中国や米国、西欧などの大規模かつ飽和した市場が買い替えサイクルに入るため、1.6%成長する見通しだ。
<5Gに備えて>
5G通信網の整備は米国や中国で2023年、欧州では2026年までかかるため、大多数の消費者は、サムスンの新型ギャラクシーS10など4G端末を買い続けることになると、アナリストは予測する。
それでも韓国のLG電子 <066570.KS>などは、4Gスマホに5Gの技術を搭載することができるとアピールしていた。ただ、発売予定日や価格が決まっていないものがほとんどだった。
中国スマホメーカーの一加手机(ワンプラス)は、5G接続でゲームができる機種を発表したが、来場者は展示ブース内でほんのわずかにスクリーンをのぞくぐらいしかできなかった。
「製品を発表するということは、商業的に販売できる体制にあるということだ。計画段階ではない」と、ワンプラスの共同創業者カール・ペイ氏はロイターに語った。「欧州で最初に(5G)スマホを売り出すメーカーの1つになれるという自信を持っている」
2019年上半期には発売する方針だという。
IDCの調査で前四半期の出荷台数が5位となった中国の小米科技(シャオミ)<1810.HK>は、初の5G端末を発表し、価格も公表した。
「シャオミは最初の価格を599ドルに設定した。競合メーカーは泣きたいだろう」と、前出のウッド氏は言う。また、ソニー<6758.T>やLGなどの下位メーカーは、5Gで利益を出すのに苦戦する可能性があると予測する。
ソニーは5G端末を発表せず、代わりに傘下の米映画子会社をフル活用し、映画や米動画配信大手ネットフリックスの動画を見るのに適した21対9のスクリーンを搭載した新たな「XperiaOne」を披露した。 
(翻訳:山口香子、編集:久保信博)

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