コラム:中国のぎこちない「二重金利」制度、意外なメリットも
Christopher Beddor
[香港 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 一時的な政策が得てして恒久的な政策になることを中国人民銀行(中央銀行)は身をもって知っているはずだ。
人民銀行は今月予想される米連邦準備理事会(FRB)の利下げに一部追随する可能性があるが、具体的にどのような措置を講じるかは定かではない。
最も簡単なのは貸出基準金利の引き下げたが、人民銀行はこの金利の廃止を以前から検討している。
中国には、誰もが認める単一の政策金利が存在しない。以前は、人民銀行が商業銀行向けに預金・貸出基準金利を設定していたが、商業銀行の預金・貸出金利はその後、自由化されており、現在はより市場志向の強い政策として、銀行間金利の誘導が用いられている。
だが、人民銀行は以前の預金・貸出基準金利の公表を続けている。貸出基準金利は2015年以降4.35%に据え置かれているが、商業銀行は今なお、この金利を基に多くの融資金利を決定している。こうした預金・貸出基準金利と銀行間金利のぎこちない併存は「二重金利」制度として知られている。
人民銀行は、この二重金利の「統一」を目指している。この問題は今年何度も取り上げられており、人民銀行の第1・四半期のレビューでも特別な言及があった。
人民銀行内では、預金・貸出基準金利の公表を中止する案が浮上している。おそらく、商業銀行の融資金利が銀行間金利の誘導に敏感に反応しているようには見えないことに不満を感じていると思われる。
キャピタル・エコノミクスが5月下旬に指摘したところによると、3カ月物の上海銀行間金利は、人民銀行の誘導で過去1年で約150ベーシスポイント(bp)低下したが、平均の融資金利は直近のピークから25bpしか低下していない。
ロイターによると、人民銀行は、大手行の最優遇貸出金利を基に算出する「貸出基礎金利(LPR)」への移行を検討している。ただ、LPRは融資金利の決定ではあまり利用されておらず、金融政策の波及効果が低いという問題を解決できない恐れがある。
このため、人民銀行は年内に景気が大幅に鈍化した場合に備えて、貸出基準金利という小さな最終兵器を温存しておきたいと考えるかもしれない。
FRBも人民銀行も今年は多大な不透明要因に直面しており、現状のぎこちない制度でも、維持するメリットはあるかもしれない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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