焦点:熱気欠くトランプ岩盤支持層、反対派は嫌悪で投票意欲向上

焦点:熱気欠くトランプ岩盤支持層、反対派は嫌悪で投票意欲向上
 9月8日、米大統領選投票日まで2カ月を切った今、トランプ大統領は2016年の勝利をもたらしてくれた「岩盤支持層」、特に非大卒白人有権者の熱気を高めることに苦戦を強いられているようだ。8月28日、ニューハンプシャー州ロンドンデリーで撮影(2020年 ロイター/Brian Snyder)
[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米大統領選投票日まで2カ月を切った今、トランプ大統領は2016年の勝利をもたらしてくれた「岩盤支持層」、特に非大卒白人有権者の熱気を高めることに苦戦を強いられているようだ。ロイターが世論調査結果を分析して分かった。
5月から8月までを対象に行ったロイター/イプソス調査と16年選挙の出口調査の結果を分析すると、トランプ氏に対する非大卒白人有権者の支持には陰りが見える。
彼らは16年時点で米有権者の44%を占め、当時の野党・民主党候補だったヒラリー・クリントン氏よりもトランプ氏を選んだ人が圧倒的だった。
現在でも非大卒白人のトランプ氏支持率は46%と、民主党候補のバイデン前副大統領に対する34%を上回っている。しかしその差12%ポイントは、5月の21%ポイントから縮小しており、16年のクリントン氏に比べた34%ポイントの大差には遠く及ばない。
さらにトランプ氏にとって悪いニュースは、非大卒白人の投票意欲がそれほど変化していない半面、民主党寄りのマイノリティー、女性、都市部住民、郊外地域住民、低所得層といったグループは投票意欲を高めていることだ。
つまり今回の選挙では、共和党が民主党に勝つために、投票率を引き上げなければならず、一段と強いプレッシャーに直面している、ということだ。
<トランプ嫌悪が投票意欲高める>
コロンビア大学の政治学者ドナルド・グリーン氏は「有権者の気分がどのように高揚し、扇動されているかを示す希少で興味深い分析だ」と語り、トランプ氏に明白な嫌悪感を持つという理由から、普段なら選挙に行かない人の投票意欲が高まっているとの見方を示した。
8月の調査では、有権者登録をしている黒人の69%と中南米系の61%が、「確実に」投票すると回答した。この比率はそれぞれ5月から7%ポイントと6%ポイント上昇している。選挙に行くと決めている有権者数は、女性や郊外地域住民、都市部住民、年収5万ドル未満の人の間でもいずれも5%ポイント上がった。
一方、必ず投票するという非大卒白人の比率は5月以降65%で横ばい、農村部では2%ポイント下がって63%となった。
また民主党員は確実に投票すると答えた人の比率が5月から8月までに約5%ポイント上昇して79%に達したのに、共和党は1%ポイント上昇の78%で、16年8月の民主69%、共和71%から逆転した。
イプソス調査を分析すると、投票に行く公算が大きいとしている有権者からの予想得票は、バイデン氏がトランプ氏を10%ポイント上回る。トランプ氏がこのバイデン氏の優位に対抗できる残された方策は、支持層の投票率が高くなるシナリオに限られる。
これまで共和党の大統領候補は、同党が高齢者や白人、キリスト教保守派、銃所有者など政治活動に熱心な有権者を取り込んできたため、投票率が低いケースで好成績を収めてきた、というのが過去の歴史だった。
もちろん、投票日が近付けば、トランプ氏の岩盤支持層がもっと活気づく可能性は大いにあるだろう。8月の調査によると、まだ態度を決めていない非大卒白人が最大で2割存在している。16年の選挙では、トランプ氏に投票した人のおよそ8人に1人は、選挙戦最後の1週間に候補者を選んだという。
<思わしくない白人からの評価>
米国はマイノリティーの人口増加が続いているが、依然として選挙を支配しているのは白人だ。16年時点では、白人は全人口の6割にとどまったにもかかわらず、有権者に占める割合は75%近くに上った。
だからトランプ氏にとって白人の意見は重い。実際、就任以降に同氏が力を入れてきたのは反移民政策で、白人が「逆差別」を受けているとの不満にも共感を示している。人種差別抗議デモ参加者を「悪党」と呼び、つい最近はウィスコンシン州で「黒人の命は大事」運動に加わっていた2人を射殺して訴追された白人の男を擁護するような発言もした。
ロイター/イプソス調査によると、8月時点で、非大卒白人の意識を見ると、「米国は悪い方に向かっている」が61%、「米経済が悪化方向」が53%、新型コロナウイルスのパンデミックに懸念を示したのが70%超で、トランプ氏のコロナ危機対応を評価したのは48%にとどまった。
大卒白人は、バイデン氏支持が48%でトランプ氏支持は40%。16年時点のクリントン氏支持とトランプ氏支持の差が2%ポイントしかなかったのと比べ、差は拡大している。
トランプ氏選対本部の広報担当者は、陣営側の調査をもとに、全ての激戦州でトランプ氏がバイデン氏に対し互角か優勢に戦いを進めているという結果になっていると話す。
「支持者の間にはトランプ氏に投票しようとの熱気が広がっている。実際にはごく少数の民主党員だけに好かれているバイデン氏とは違う」と強気の見方を維持している。
ただ複数のメディアや大学の調査では、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア、フロリダ、アリゾナなどほとんどの激戦州でバイデン氏の支持率がトランプ氏を少なくとも数ポイント上回っている。
トランプ氏は具体的な根拠なしに不正が増えると主張し、有権者に郵便投票をしないよう呼び掛けている。しかし、これは裏目に出かねない。投票率が高い方がトランプ氏には有利だというデータもあるからだ。
(Chris Kahn記者)

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