コラム:中国、トランプ氏はウォーレン氏より「まし」な相手か

コラム:中国、トランプ氏はウォーレン氏より「まし」な相手か
 10月8日、トランプ米大統領の「米国第一」主義は結局、中国にとってさほど悪くない政策なのかもしれない。写真は6月14日、ニューハンプシャー州マンチェスターでスピーチをするウォーレン氏(2019年 ロイター/Brian Snyder)
Gina Chon
[サンフランシスコ 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領の「米国第一」主義は結局、中国にとってさほど悪くない政策なのかもしれない。中国によるイスラム教徒少数民族ウイグル族への弾圧を巡って米政権が態度を硬化させたことで、今週の米中貿易協議への期待はしぼんだ。しかし来年の米大統領選の民主党候補として支持率を伸ばしつつあるエリザベス・ウォーレン上院議員が大統領になれば、人権問題や米製造業による中国生産について、トランプ氏以上に厳格な態度で臨むだろう。
米中貿易交渉は1歩進んで2歩下がる状態が続いている。米国務省は8日、新疆ウイグル自治区でのウイグル族拘束に関係したとして、中国政府当局者や共産党関係者へのビザ(査証)発給を制限すると発表した。7日には米商務省が同様の理由で、28の中国企業や政府機関を禁輸措置の対象に加えたばかり。貿易協議の中国側首席交渉官、劉鶴副首相による10日のワシントン訪問に暗雲が漂った。
しかしトランプ氏は、通商合意と引き換えに一定の譲歩に応じる姿勢も示している。例えば、貿易協議の一環として中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置を緩和する可能性があると述べた。香港の抗議活動を巡る中国批判も穏やかな調子にとどめているほか、ペンス副大統領による中国への強硬姿勢を示す演説も延期させたままだ。
ウォーレン氏が大統領選に勝利すれば、トランプ氏ほど「融和的」な態度は望めないだろう。ウォーレン氏は「経済愛国主義」を唱え、国内製造業を育成する「中国製造2025」を米国も見習うべきだと述べている。対中関税を支持し、リーバイスやアップルは雇用を海外に流出させていると批判。こうした動きを奨励する措置の撤廃を約束している。
ウォーレン氏はまた、国内製造を促進するために積極的にドル相場を管理する政策も支持している。トランプ氏はそうした策をちらつかせるだけで、実行には移していない。
中国と通商合意を結ぶ際の前提条件もトランプ氏より厳しいだろう。団体交渉権など労働者の権利を認めることや、人権および信教の自由の保証、数々の環境基準などが含まれる。
トランプ氏は、中国が米大統領選をにらんで貿易交渉を膠着させていると批判してきた。また同氏は日米貿易協定のような小規模な通商合意でも大きな勝利だと満足し、お世辞にも反応する。しかしウォーレン氏相手にそんな駆け引きは通用しないだろう。中国は今なら、つけ入ることが可能だ。
●背景となるニュース
*米国務省は8日、ウイグル族の弾圧に関与した中国政府当局者や共産党関係者に対し、ビザ発給を制限すると発表。
*米商務省は7日、同様の理由で28の中国企業や政府機関について、米企業による輸出を制限する対象に加えると発表したばかり。
*貿易協議の中国側首席交渉官である劉鶴副首相は10日、ワシントンで米国高官らと会談する予定。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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