コラム:GAFA追及には「力不足」の米議会
Gina Chon and Tom Buerkle
[サンフランシスコ/ニューヨーク 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米議会のIT大手企業に対する強腰は、しょせん見かけ倒しにすぎない。これら企業の幹部を議会に呼び出して今週16日と17日に行われた公聴会では、独占禁止法問題とフェイスブック(FB)による暗号資産(仮想通貨)リブラ発行計画の双方について、議員たちが効果的な攻め手を駆使して業界側を大慌てさせるような見せ場を作ることができなかった。せいぜいアマゾン・ドット・コムがサイトでの自社ブランド商品の優遇に関して聞かれた際に落ち着かない様子になった程度で、FBやアップルへの質問は全く本筋から外れる内容だった。
議会では与野党ともに、かねてからアルファベット、アマゾン、FB、アップルといった「GAFA」と呼ばれるIT大手による利用者データの扱いに問題があるなどと強く批判していた。だからこの公聴会は、議会が真剣に責任を追及する姿勢をアピールする絶好の機会だった。
ところがふたを開けて見ると、IT大手に何のダメージを与えられず終わってしまった。独占禁止問題を議論するはずだった下院小委員会では、FBがどうやってマイスペースとの競争に勝ってソーシャルネットワーク業界で支配的地位を確立したかや、アップルのiクラウド向けプロモーションがiPhone(アイフォーン)上でポップアップされ続ける理由などに話題がそれてしまった。
議会は、IT大手に対する独占禁止法違反調査の可能性について、言及さえしなかった。せっかく司法省と連邦取引委員会(FTC)が、独占禁止法違反調査に乗り出す場合に備えて、仕事を分担する態勢を整えたというのにだ。司法省のデラヒム反トラスト局長は6月、サービスの質的低下も競争を妨げる事象と認め得るとの解釈を示していた。
下院金融サービス委員会のウォーターズ委員長(民主党)は、FBの規模や過去のプライバシー保護法違反行為に照らせば、リブラの導入で同社が「とてつもない経済的な力を行使」して、さまざまな国の政府を不安定化させかねないと懸念を表明した。
それでもFBのプライバシー保護やマネーロンダリング(資金洗浄)取り締まり姿勢を巡って、同社のブロックチェーン関連業務を総括するデービッド・マーカス氏に対する議員の姿勢は全く厳しさを欠いていた。このためマーカス氏にとっては、最近ムニューシン財務長官やパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が提起している規制上の問題に対応することが最大のハードルと言える。
議会は昨年、FBのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)やグーグルのピチャイCEOを招致して開いた公聴会でも、適切に追及ができなかった。それは議員側にIT企業を支えている専門技術や事業モデルへの理解が不十分だったからだという側面が大きい。
実行力を伴わないこうした議会の姿勢は、相応の結果しかもたらさない。つまりIT大手は痛みを感じることがない限り、自分たちのやり方を修正する気をなかなか起こさないのだ。
●背景となるニュース
*独占禁止法問題を調査している米下院小委員会で16日、IT大手を対象とした公聴会が開かれ、GAFA4社の幹部が証言した。
*16─17日には米上下両院でフェイスブックの暗号資産(仮想通貨)リブラを巡る公聴会も開催された。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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