コラム:「トランプ・ファースト」に苦しむ米IT大手

コラム:「トランプ・ファースト」に苦しむ米IT大手
 7月23日、米国の巨大IT企業が「トランプ・ファースト」政策に苦しんでいる。写真は6月30日、ソウルで撮影(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)
Gina Chon
[サンフランシスコ 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国の巨大IT企業が「トランプ・ファースト」政策に苦しんでいる。トランプ米大統領は、アマゾン・ドット・コムと国防総省のクラウド契約に口出しし、アルファベット傘下のグーグルと中国との関係に疑問を呈し、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への販売許可も利用して米IT企業を罰する構えをみせている。
トランプ氏のシリコンバレー嫌いは有名だ。しかし最近とみに圧力を強め始め、先週は資産家のピーター・ティール氏の告発を受け、グーグルと中国政府との協力関係について調査に乗り出すとツイッターで表明した。ティール氏はトランプ氏支持者で、アルファベットなどIT企業を批判する上院議員にも献金している。
トランプ氏は続いて、国防総省とアマゾンのクラウド契約にも介入する可能性を示した。これは競争入札で負けたオラクルやIBMからの不満に答えたものだ。アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)はワシントン・ポスト紙を所有していることで、以前から大統領の反感を買っていた。
一方、オラクルのサフラ・キャッツCEOはトランプ氏の政権移行チームに所属していた人物で、同氏の覚えがめでたい。トランプ氏は先週、「偉大な複数企業」が不満を申し立てていると述べた。
大統領は、企業に寵愛を与えたり取り上げたりする手段として、ファーウェイへの販売再開許可も利用する可能性がある。22日にはグーグルやインテル、クアルコム、ブロードコムなどのCEOがホワイトハウスで大統領と会い、米国が禁輸措置を科しているファーウェイへの販売許可について話し合った。トランプ氏は、米企業の販売許可申請について「適時に」判断することに合意した。この判断も、グーグルを罰してクアルコムのような政権に近い企業をひいきにする道具に使われそうだ。
過去にも特定の企業をひいきにした大統領はいた。例えばアルファベットはオバマ前政権と近く、スタッフが政権の最高技術責任者に就いた。しかし米企業のCEOがこのように政権に関わるのは異例。これほどあからさまに企業を罰したり優遇したりするトランプ氏の傾向は、憂慮すべきことだ。
●背景となるニュース
・米IT企業7社のCEOは22日、ホワイトハウスで、禁輸措置が発動されているファーウェイへの販売再開問題について協議した。ホワイトハウスによると、CEOらはトランプ大統領のファーウェイ政策に強い支持を示し、大統領は商務省が販売許可について適時に判断することに合意した。[nL4N24O025]
・トランプ氏は6月29日、中国の習近平国家主席との会談後、米企業によるファーウェイへの販売再開を許可する可能性を示したが、詳細は明らかになっていなかった。
・トランプ氏は7月18日、アマゾンとマイクロソフトが受注した国防総省とのクラウド契約、総額100億ドルについて、本格的に介入に乗り出す構えを示した。受注獲得の競争入札で敗れたオラクルやIBMから入札過程について不満が出ていた。
・トランプ氏は7月16日、グーグルと中国政府の関係について政権が調査に乗り出すとツイッターに投稿した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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