コラム:米金融大手の報酬、人員増強で弱り目にたたり目

コラム:米金融大手の報酬、人員増強で弱り目にたたり目
 7月19日、米金融大手のバンカーやトレーダーは一般的には高い報酬を手にしているが、業界なりにばらつきはある。写真は6月15日、ニューヨークのウォール街で撮影(2019年 ロイター/Eric Thayer)
Antony Currie
[ニューヨーク 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米金融大手のバンカーやトレーダーは一般的には高い報酬を手にしているが、業界なりにばらつきはある。各社は上期決算で減収が相次ぎ、社員の報酬は悪影響を受ける見通しだが、タイミングの悪い人員増強がさらに打撃を大きくしている。
ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーの従業員は、絶対的な基準からすれば最もさえない気分になりそうだ。前年比7%強の減収となったゴールドマンは株主を優先し、報酬総額を11%圧縮する。約3%の人員増により、この圧縮率は従業員1人当たりにすると14%になる。
収益の落ち込みが13%と米金融大手で最も大きかったモルガン・スタンレーの投資銀行部門の従業員は、さらに悪い事態に見舞われそうだ。同社は報酬総額を減収分よりも大きい割合で削った。部門ごとの従業員数は公開しておらず、投資銀部門の従業員1人当たりの平均報酬を割り出すことはできない。
シティグループとバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)も部門ごとの従業員数を明らかにしていない。
JPモルガンのコーポレート・投資銀部門も同様だ。ただ、同社の従業員には同業他社よりも恵まれている点がある。報酬総額の圧縮は2%と最も小さく、収入の落ち込み分の半分以下にとどまったのだ。しかし同部門はこの1年間に従業員数が7%ほども増えたため、平均報酬は8%以上減少することになる。
報酬の点では、6月に決算を発表したジェフリーズの従業員はもっとひどい気分を味わうだろう。従業員数をJPモルガン並みに増やしたため、従業員の平均報酬は11%以上の削減と、報酬総額の圧縮の2倍近い落ち込みとなっている。
それでもジェフリーズは、同業他社に比べ経営規模こそ小さいが、最も魅力的な職場であり続けている。今年の上期と下期の報酬の比率が昨年並みなら、平均的な年間報酬は46万4000ドルとなる。これは従業員1人当たりの報酬でゴールドマンを13万ドル上回る。最大手が常に最も太っ腹というわけではない。
●背景となるニュース
・米金融大手が第2・四半期と上半期の決算を相次いで発表し、バンカメは上期が前年比1%の増収、JPモルガンは4%の増収だった。トレーディングや助言業務、債券・株式の引き受けなどの投資銀部門はそれぞれ3.2%、4.5%の減収だった。
・シティグループの上期は1%弱の減収で、ゴールドマンとモルガン・スタンレーの収益はいずれも1桁台半ばの落ち込みだった。モルガン・スタンレーの投資銀行部門は収益が13%ほど減った。
・ゴールドマンとモルガン・スタンレーは6月末時点の従業員数が前年同期と比べて3%程度増加。JPモルガンは投資銀部門の人員を7%程度増やした。ジェフリーズ・グループは5月末時点の従業員数が前年比6%増えた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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