アングル:次の米国防長官代行、中国脅威論者エスパー氏の横顔

アングル:次の国防長官代行は元空挺団、90年代から中国脅威論
 6月18日、米国防長官代行に起用されるマーク・エスパー陸軍長官言わく、米国は今後何年にもわたり、中国と戦略的競争を繰り広げることになると気づくのが遅かった。写真はバージニア州アーリントンのペンタゴン(2019年 ロイター/Joshua Roberts)
Phil Stewart
[ワシントン 18日 ロイター] - 米国防長官代行に起用されるマーク・エスパー陸軍長官言わく、米国は今後何年にもわたり、中国と戦略的競争を繰り広げることになると気づくのが遅かった。
エスパー氏は、2018年に国防総省が戦略文書「国家防衛戦略」を公表するずっと前から、中国軍の増強を注視していたと語る。国家防衛戦略は、アフガニスタンなどにおける反政府勢力問題よりも、中国、ロシアとの競争を優先事項に位置づけた。
エスパー氏はロイターに対し、10年以上陸軍に勤めた後に連邦議会のスタッフとなった時期も含め、自身は1990年代から中国を重要な課題と見なしていたと語った。
4月に行ったインタビューで、同氏は「中国と戦略的競争になるということを認知するのが少し遅かった。いや、遅かった」と発言している。
エスパー氏は、1990年代半ばに陸軍参謀として太平洋地域の作戦立案に携わっていたことに触れ、「中国の問題、中国との競争、中国の能力といったことは私にとって新しい話題ではない。私はこの進展を20年以上見続けてきた」と述べた。
ロシアとの競争もまた、以前からの焦点だ。エスパー氏は5月に行われたワシントンのシンクタンク「アトランティック・カウンシル」のイベントで、ロシアや中国といった相手に対する米軍の優位性は、米軍がどうやって戦うか、いつ戦うかの意思決定を握っていた冷戦が終了したときから減退したと語った。
「今日のロシアと中国は、軍の編成、能力、武器体系を積極的に発展させており、長年にわたり我々が保ってきた優位性が通用しない」
中国に厳しいアプローチをとってきたトランプ大統領は18日、記者団に対して、国防長官代行の後任にエスパー氏を起用する可能性が高いと述べた。関係者によると、数日以内に指名されるとみられる。
しかし、シャナハン国防長官代行が脱落したケースに備え、エスパー氏の名前は長い間候補者リストに載っていた。やはり中国を優先事項としていたシャナハン氏は18日、長官指名手続きを辞退した。
<経歴には湾岸戦争とレイセオン>
シャナハン氏に否定的だった人々は、安全保障政策の経験のなさと、防衛大手ボーイングの幹部だったことが利害の対立になりかねないと批判していた。
エスパー氏もまた、米防衛大手レイセオンで7年間、政府対応部門バイスプレジデントを務めたことに対し、懸念の声があがっている。
独立非営利団体の「プロジェクト・オン・ガバメント・オーバーサイト」のディレクター、マンディー・スミスバージャー氏は、「次期国防長官代行が元レイセオン幹部だということは喜びがたい」と語る。
しかしエスパー氏には、1986年に卒業した米陸軍士官学校にまでさかのぼる軍での豊富な経験がある。陸軍のホームページによると、1991年には 第101空挺師団の一員として湾岸戦争に参加。その後、欧州で空中機動ライフル部隊を率いた。国防総省での経験には、国防次官補代行も含まれる。
米政府関係者が、イランとの緊張を高めることが、中国とロシアを焦点に置く国家防衛戦略にどう影響を与えるかと頭を悩ませるタイミングで、エスパー氏は国防総省を率いることになる。
国防総省はここ数週間で、中東への増派を2回発表。派遣される兵士は総勢約2500人となる。
この数字は、エジプトからアフガニスタンまで、同地域に派遣されている7万人の米兵士と比較するとごくわずかだが、大幅な増派をすれば今度は中国とロシアに対応できなくなる、と専門家は指摘する。
与党・共和党を含めた議員らは、職を失うことを恐れず率直に発言できる、より力を持った正式な国防長官がいまだ指名されていないことを懸念している。
史上最も長い国防長官代行となったシャナハン氏は、トランプ大統領との意見の相違で突然辞任したマティス前国防長官の後任として起用された。
上院軍事委員会の委員長、共和党のジェームズ・インホフ上院議員は、エスパー氏に信頼を寄せる。「トランプ大統領は彼のことを買っているし、大統領は私も同意見だと知っている」
下院軍事委員会の委員長を務める民主党のアダム・スミス議員も好意的だ。
「エスパー氏は、何年も前に連邦議会のスタッフだったころや民間で働いていたときから知っている。国防総省が彼のリーダーシップから得られるものは多いだろう」
(翻訳:宗えりか、編集:久保信博)

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