アングル:原油市場、ベネズエラ制裁でも平静な訳

アングル:原油市場、ベネズエラ制裁でも平静な訳
 2月5日、米政府がベネズエラ国営石油会社PDVSAへの制裁を発表してから1週間が経過したが、原油市場は落ち着きを保っている。カラカスにあるPDVSAのガソリンスタンドで昨年9月撮影(2019年 ロイター/Marco Bello)
[ロンドン 5日 ロイター] - 米政府がベネズエラ国営石油会社PDVSAへの制裁を発表してから1週間が経過したが、原油市場は落ち着きを保っている。他の産油国に十分な生産余力があるほか、米国も戦略石油備蓄(SPR)を持ち、ベネズエラによる生産の落ち込みをカバーできるためだ。
ベネズエラの原油輸出量は1日当たり100万バレル程度で、世界の全生産量の約1%。その半分が米国に出荷されている。米国の製油所は重質・高硫黄原油の精製に適した設計になっており、こうした原油の多くがベネズエラ産となっている。
世界最大の産油国のサウジアラビアは余剰生産能力が日量180万バレルほどもあり、ベネズエラの生産の落ち込みを容易に穴埋めできる。アラブ首長国連邦(UAE)やクウェートなど他の石油輸出国機構(OPEC)加盟国も1月に減産を開始しており、増産が可能だ。
一方、OPECの創設メンバーであるベネズエラは、かつては世界第3位の産油国の地位を誇ったものの、近年は経済が破綻して生産が減っている。OPECの最近の減産合意でもリビアやイランとともに適用が免除された。
ベネズエラは既に生産量が減っていたため、制裁による生産減少の影響は小さい。指標となる北海ブレントは米国が制裁を発表した先月29日に61ドルだったが、2月5日も63ドル以下の水準で取引された。
サン・グローバル・インベストメンツのミヒル・カパディア最高経営責任者(CEO)は「ベネズエラが世界の石油市場から抜け落ちれば、原油相場は短期的に押し上げられるが、影響は限られる」と指摘。「米国は他の購入先を探すだろうし、製油所も対応できる」と説明した。
さらに米国には約6億5000万バレルのSPRがあり、油価が上昇すればトランプ大統領がSPRからの放出に踏み切るとみられている。SPRの3分の2を高硫黄原油が占める。
業界幹部は「(ベネズエラ制裁に対する)市場の反応は非常に小さい。原油に十分な生産余力があるのに加えて、必要とあればSPRもある。トランプ大統領は原油価格の急激な上昇を容認しないだろう」と述べた。

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