「ネズミの会議」という寓話(ぐうわ)がある。いつも一匹の猫にひどい目にあわされてきたネズミたちが集まって対策を話し合う◆「猫が近づいたらわかるよう、首に鈴をつけよう」。それは名案だとみんな喜んだ。では誰が猫に鈴をつけるか。そう問われると全員が黙り込むばかり…。ネズミたちは相変わらず、猫におびえて暮らすしかなかった◆自分の都合や利益ばかり優先させると、社会全体を危機にさらしてしまうことがある。原発から出る「核のごみ」の最終処分はどうだろう。きのう玄海町議会は特別委で文献調査受け入れの請願を採択した。誰も手を挙げないなら、立地自治体が猫に鈴をつけようと◆見方を変えれば、国からの交付金をあてにした「自分の利益」ばかり優先し、将来にわたって周辺地域まで危険にさらす愚行に映るだろう。私たちは、ままならない難題に右往左往するネズミである。家電に囲まれ、何不自由ない生活を送りながら、核のごみは知らぬ顔…。鈴をつけるべきは、日々の暮らしや社会のあり方なのかもしれない◆住民への説明もなく、あっという間に審議は終わった。若者の流出で2050年には消滅しかねないと県内で最も懸念される「原発のある町」で、持続可能な未来をどう描くか。住民とじっくり向き合うことは、猫に鈴をつけるほど困難でもなかろうに。(桑)

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