基準15倍の有害物質も…20年以上放置の産廃焼却施設、さいたま市が行政代執行へ 2025~26年度に解体、撤去

行政代執行により解体、撤去される見通しの産業廃棄物焼却施設。煙突の高さは約35メートル。近くを流れる綾瀬川から有害物質は検出されていない=1月29日、埼玉県さいたま市岩槻区平林寺

 埼玉県さいたま市は30日、20年以上にわたり放置されていた岩槻区平林寺の産業廃棄物焼却施設について、有害物質が飛散して生活環境保全上の支障の恐れがあるとして、廃棄物処理法に基づく行政代執行を実施すると発表した。解体、撤去する方針で、2024度から調査を実施し、25~26年度にかけて工事を行う。廃棄物処理法に基づく行政代執行は同市で初めて。

 市産業廃棄物指導課によると、有限会社「荒井産業」が1990年に施設を設置。焼却灰の不適正な処理を理由として、県から2000年に処分業の許可を取り消された。02年の競売により土地所有権が移転された後も、施設はそのまま放置されていた。

 市は23年3月に調査し、施設内部に残ったばいじんなどの混合物から、基準の最大5~15倍のカドミウムやダイオキシン類などの有害物質を検出。今年1月15日、飛散、流出を防止するよう、廃棄物処理法に基づく行政処分(措置命令)を行った。同社と元役員、土地所有者は3月下旬、いずれも資金不足を理由に履行できないと申し出た。

 市は措置が講じられる見込みがないとして、行政代執行を決定した。廃棄物処理法の措置命令違反として、元役員らに対する刑事告発を検討。法律に基づき、行政代執行にかかった費用を請求する。

 市は24年度一般会計当初予算に、調査費など約1300万円を計上。調査により撤去費用を算出し、市議会の承認を得て、工事を25年度後半に着手する見通し。

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