たった5坪のイタリアン食堂

板橋駅東口を線路沿いに北へ歩くと年季の入った建物が並ぶ通りがある。焼鳥屋、立ち飲み屋、ラーメン屋、スナック、居酒屋……。細々とした飲食店が並ぶなか、ひときわ小さく店を構えているのが『taverna minimo』だ。

目印はイタリアの国旗ならぬ、イタリア風3色の提灯。
目印はイタリアの国旗ならぬ、イタリア風3色の提灯。
店の幅は扉2つ分。
店の幅は扉2つ分。

店名の『taverna minimo』はのイタリア語で「小さな食堂」という意味。扉を開けると手前にふたりが座れるテーブル席が2つ。奥にあるカウンター席はソーシャルディスタンスを守ると2席ほど。正直、せまい! でも、このせまさが心地いい。テントの中や押し入れの中が妙に落ち着くような、あの感じ。

ひとりかふたりで行くとちょうどいい。
ひとりかふたりで行くとちょうどいい。

ディナーはアラカルトやワインを。ランチタイムは肉・魚料理、またはパスタにスープとサラダがつくセットメニューが中心にそろう。取材時(2021年8月)のランチはパスタメニューのみの展開だが、それでも8種ほどのパスタが並んでいる。ハンバーグとの合盛プレートはお腹いっぱいになりそうだ。

溺れるほど大量のウニがのったモチモチ生パスタ!

「ウニのペペロンチーノのパスタセットがおすすめです。板ウニ1枚を丸ごと使っています」と、店主の生沼(おいぬま)さんが声をかけてくれた。「板ウニ1枚」と聞き、木箱にみっちり並んだウニを想像しながら、ウニのペペロンチーノ2000円と、プラス200円でサラダ、スープ、パンのつくランチセットを注文することに。

見事なウニの山に感服!
見事なウニの山に感服!

パスタ120g、ウニ100g。お皿の半分近くがウニ! 口にすればクリーミーなウニの迫力とパスタのモチモチ感に悶絶する。ペペロンチーノというから辛い味を想像していたが、ニンニクとオイル、塩の風味が一体となり、マイルドでやさしい味。だからウニの味がしっかり引き立つ!  おいしさの秘訣は、渋みや苦味の元となるミョウバン無添加のウニを使うこと。そのためウニ本来の甘みとコクをダイレクトに味わえる。フォークを口に運びつつ、そう簡単には減っていかないウニを確かめては幸せをかみしめる。

庶民のランチ価格にしてはちょっと勇気がいるが、このボリュームなら大納得!
庶民のランチ価格にしてはちょっと勇気がいるが、このボリュームなら大納得!

よくある定番をちょっとはずす、だから発見がある

サラダは野菜の味が濃い!
サラダは野菜の味が濃い!

野菜がおいしいのも『taverna minimo』の特徴だ。減農薬・無農薬の野菜を全国から厳選して取り寄せている。サラダはみずみずしくて、エグみがないからパクパク食べてしまう。スープはバターナッツのポタージュ。ちょっと珍しい野菜を積極的に使うのもこだわりだ。

その日おいしい野菜を使いたいからスープは日替わり。料理の邪魔をしないパンもいい感じ。
その日おいしい野菜を使いたいからスープは日替わり。料理の邪魔をしないパンもいい感じ。
YOGA(ヨーガ)というブランドのフルーツジュースは、洋なし、アプリコット、ピーチの味がそろって各500円。日本ではあまり見かけないものの、イタリアでは国民的ドリンクだそう。
YOGA(ヨーガ)というブランドのフルーツジュースは、洋なし、アプリコット、ピーチの味がそろって各500円。日本ではあまり見かけないものの、イタリアでは国民的ドリンクだそう。
自家製辛口ジンジャーエール500円は刺激十分! ショウガの風味をダイレクトに感じる辛さで、一度飲むとハマります。
自家製辛口ジンジャーエール500円は刺激十分! ショウガの風味をダイレクトに感じる辛さで、一度飲むとハマります。

『taverna minimo』ではちょっとしたひねりのあるメニューが並ぶ。ボロネーゼ1000円は牛ひき肉だけでなく牛すじを加えていたり、アンチョビを添えたトマトパスタ1000円にはフレッシュな野菜が盛られていたり。「食べにきて新しさを感じたり、発見をしたりしていってほしい」と言う生沼さん。この小さな店の中は驚きに満ちている。

『taverna minimo』のを切り盛する生沼さんは、茗荷谷の人気カフェ『totoru』のマネージャーとしても活躍する実力派!
『taverna minimo』のを切り盛する生沼さんは、茗荷谷の人気カフェ『totoru』のマネージャーとしても活躍する実力派!
住所:東京都北区滝野川7-1-7/営業時間:11:00~14:00LO・16:00~19:00LO/定休日:月・火・水/アクセス:JR埼京線板橋駅から徒歩1分

構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子