藤沢2歳児・傷害致死事件

2023年2月、神奈川県藤沢市に暮らす田代芽衣(27)が、前年に2歳の息子の空来ちゃんに暴力を振るって死に至らしめたとして逮捕された。

《藤沢2歳児・傷害致死事件から考える》「小学生くらいまで当たり前だと思っていたけど、中学生くらいでうちの異常さに気づいて、嫌で嫌でたまらなかった」見落とされがちなヤングケアラーの2つの盲点「依存症」と「ネグレクト」_1
逮捕された田代容疑者(本人フェイスブックより)
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芽衣は若い頃から水商売をする中で、空来ちゃんを出産。だが、ネグレクト(育児放棄)を理由に児童相談所に一時保護される。そこで芽衣は親子再統合のためのプログラムを受けた後に、空来ちゃんを引き取ったものの、自宅で暴行して死なせたとされている。

事件後の報道によって、芽衣が「ヤングケアラー」だったことが大きく取り上げられた。問題は、芽衣の母親の不安定な生活にあったようだ。芽衣がまだ6歳くらいの時に、母親は韓国籍の父親と離婚。その後、母親は子育てを放棄し、芽衣とその弟を実家や元夫の家に預けた。たらい回しのような生活の中で、芽衣は不安定な日々を過ごしていたそうだ。

やがて、母親は暴力団構成員の男性と再婚。金銭に余裕ができたのか、芽衣と弟を引き取ることにしたが、間もなくこの男性が事件に関与したとして逮捕される。母親は水商売をはじめ、家を留守にすることが増えた。そのため、芽衣は生活を維持するために、母親に代わって自分が家の用事をこなすようになる。

報道で芽衣がヤングケアラーとされたのは、祖父母の家や、親不在の家で家事をしていたためだ。彼女にしてみれば、そうでもしなければ祖父母たちに受け入れてもらえない、生活が成り立たない、という切羽詰まった事情があったのだろう。

では、なぜ事件報道においてヤングケアラーだった過去がにわかに注目されたのだろうか。ヤングケアラーの知られざる一面に光を当て、考えてみたい。