風が吹く様子を名字に持つプロ野球選手

森岡さんによると、「稀少名字が生まれる背景にはいくつかのパターンがある」という。多いのが、地名由来だ。たとえば今大会に出場している敦賀気比(福井)の上加世田頼希選手。「上加世田」の4文字が名字で「うえかせだ」と読む。

「この選手の出身は大阪ですが、ルーツは鹿児島かもしれません。鹿児島に加世田という地域があります。そして鹿児島の人は地域名の前に上下とか東西南北を付けるんですよ。だから名字が4文字ある人は珍しくありません」

他にも九州には命名に独特のルールがあるという。たとえばかつて阪神タイガースの投手だった源五郎丸洋さん(日田林工・大分)。ユニフォームの背中に書かれた名字のローマ字が一周しそうで驚愕したものだが、森岡さんによると

「九州では新しく開いた田んぼに『○○丸』と名付ける風習があったんです。だからたぶん、源五郎さんが新しく開いた田んぼで働いていた方がご先祖様ではないかと」

地名ではないが、風景・光景由来と思われる名前もある。かつて瀬戸内高(広島)の監督を務めた後原富(せどはら・ひさし)さん。名前全部が難読だが、「後原」の元は「背戸原」だという。

「背戸は家の裏口という意味で、背戸原は『家の後ろにある原っぱ』という意味。そこに違う漢字を当てたんでしょう」

自宅裏の原っぱを名前に持ってくるとは、なんか良い感じの名前ではないか。風が吹く様を描いた粋な名字もある。広島カープで活躍し、いまはオリックスバファローズのコーチを務める梵英心さん(三次高・広島)。「そよぎ」と読む。

「彼の実家はお寺なので、恐らく仏教用語から『梵」にしたんだと思います。『梵』の漢字の意味は『木の上を風がそよそよと吹くこと』。それで読みを『ぼん』ではなく『そよぎ』にしたのでしょう」