26歳のおばあちゃん猫、初めての子育て 子猫を抱っこしてゴロンとしたり見守ったり

まるでわが子のように子猫を抱っこするピーちゃん

 阪神・淡路大震災の混乱期に保護されたピーちゃんのもとに3匹の子猫がやってきた。26歳差のシニア猫と子猫の心温まる様子は、まさに年の離れたよき相棒。ピーちゃんの26歳とは思えないお達者ぶり、子猫の母親になったような溺愛ぶりを、写真とともに、じっくりご覧ください。

(末尾に写真特集があります)

阪神・淡路大震災の混乱期に保護されたご長寿猫

 本誌2020年3月号の「阪神・淡路大震災直後に生まれたピーちゃん、御年25歳!」という記事を覚えているだろうか?かなり時間も経っているので、まずはピーちゃんの生い立ちから紹介しよう。

 ピーちゃんと飼い主の藤藪みさ子さんとの出会いは、今から26年前の1995年、関西地方に未曾有の被害をもたらした阪神・淡路大震災が発生して間もない頃。藤藪さんの長男と長女が「小学校の側溝に落ちていた」と、まだ目も開いていない小さな子猫を連れ帰ったことがきっかけだ。当時、家族とともに神戸市灘区のマンションで被災した藤藪さん。被災後しばらくは避難所と自宅を行き来するという不自由な生活を送っていたが「大変なのは猫も人も一緒」と、やっとの思いで手に入れた子猫用ミルクと献身的な世話で、子猫の命をつなげた。

2020年3月号でお話をうかがったときのピーちゃん(25歳)と藤藪みさ子さん(写真・平山法行)

 その後大きな病気をすることもなく、10年、20年と歳を重ねたピーちゃんは、2019年の12月、「被災地で拾った子猫元気です」という見出しで神戸新聞の社会面で大きく取り上げられ話題に。続けて本誌にも登場いただいた。そして今年、2021年にめでたく26歳を迎えたピーちゃんは、人間の年齢に換算すると120歳という驚異的なご長寿猫(神猫!)になり、そしてなんとこの度、ピーちゃんが26年の猫生で初めて子猫を迎え、育児にいそしんでいるというのだ。

初めての子猫に母性が目覚める?

 子猫がやってきたのは、梅雨明け間近のある日のこと。「どこかの家の庭で産まれていたそうで、『安楽死させてほしい』と、息子の知り合いの動物病院に持ち込まれたそうです。その話を聞いた息子が『そんな惨むごいことさせるわけにいかない』と2匹を引き取り、うちに連れてきました」と藤藪さん。しかも2匹は、まるで26年前のピーちゃんのように小さな新生児だった。

藤藪さんに仲良く抱っこされるピーちゃんとリリ&ルル

 2匹の子猫の譲渡先に手を挙げたのは藤藪さんの娘さんだったが、その頃ちょうど仕事が忙しく「子猫に2、3時間おきの授乳や排泄の世話をするのは難しい」ということで、子猫が自立するまで、藤藪さんが世話をすることになった。こうしてピーちゃんと2匹の子猫の生活が始まったのだが、気になるのは、環境の変化が大の苦手で、26年間、子猫を見たことのないピーちゃんの反応だ。かつて神戸新聞の取材のときは、カメラマンに「シャーッ(あんた誰?)」と言いながら、みごとな猫パンチをお見舞いするなど、数々の武勇伝があるピーちゃんだ。

ピーおばあちゃんのグルーミングを手伝うリリ

 ところが、相手が小さな子猫となると、話が違うらしい。ピーちゃんは、子猫が「遊んで~」「抱っこして~」と近寄れば「ハイハイ、わかりました」というように、大事そうに子猫を抱っこしてゴロンと横になり、2匹がパラパラと追いかけっこを始めると、子猫が動く方向に首を動かしながら見守るなど、まるで孫か玄孫(やしゃご)の気分?「この子たちは26年前の私と似たような境遇」とわかっているのか……?子猫たちの面倒をよく見るのだ。「でも、子猫がきた頃、私が子猫を抱っこしてミルクをあげていると、ピーちゃんがじーっと私の顔を見ているんです。あわてて『ピーちゃんを忘れたわけじゃないよ、ごめんね』と声をかけると、安心したようにすり寄ってきて……。ピーちゃんなりに、ちょっとやきもち焼いていたのかもしれませんね」

2匹が巣立ち、寂しくなったところに新しい子猫が

 献身的な藤藪さんとピーちゃんの世話で、「リリ」「ルル」と名付けられた2匹の子猫は自分のことは自分でできるようになり、娘さんの家に巣立って行った。2匹がいなくなると、ピーちゃんは「あれ? チビたちはどこに行ったかな?」というように探していたそうだが、これまたなんと!ピーちゃんが寂しくなったタイミングで、新しい子猫がやってきたのだ。

子猫が危ないことをしないか、見守るピーちゃん

「生後2ヶ月ぐらいの女の子で、きょうだいで保護されたそうです。1匹は別の人にもらわれて、もう1匹を家族として、ピーちゃんの26歳差の妹として迎えることにしました(笑)。娘の家に行った『リリ・ルル』とのつながりで、名前は『ララ』です」

 活発なララは部屋中を爆走し、テーブルの上の物もヒョイヒョイと手で遊んで落とすなどやんちゃぶり。ピーちゃんも、最初は戸惑い気味だったが、今ではすっかり、なくてはならない存在に。

寝るときだっていつも一緒!

「ピーちゃんも、さすがに歩くのもヨタヨタしていますし、腎臓をはじめ、あちこち悪くて動物病院に通い点滴を受けたり、お薬をもらったりしています。飼い主の私も歳ですから、なんだかんだと持病があり、病院通いです。そんなシニア猫と飼い主とですが、息子や娘に支えられながら『まだまだ一緒にがんばろうね~』と励まし合っています」と藤藪さん。

 これからももっともっと長生きしてね! ピーちゃん!

(文・西宮三代 写真・藤藪みさ子)

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