こちらは南天の「ろ座」(炉座)の方向約1億5700万光年先にある銀河「NGC 922」です。NGC 922の明るい中心部は歪んだ渦巻腕(渦状腕)とリング状の構造に取り囲まれています。リング構造や渦巻腕を彩るピンク色の輝きは電離した水素から放射された光で、新たな星を生み出す星形成活動が起きていることを示しています。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された銀河「NGC 922」(Credit: NASA and ESA)】
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された銀河「NGC 922」(Credit: NASA and ESA)】

NGC 922のリング構造は、現在観測されている状態から約3億3000万年前に別の小さな銀河(※)が正面から衝突・通過したことで形成されたと考えられています。衝突した銀河がNGC 922の中央部を通過した際に引き起こした重力の波紋は、ガス雲を崩壊させて星形成活動を誘発したとみられています。

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※…2MASXI J0224301-244443。画像上方の視野外に位置しているため、ここには写っていない。

このようなリング構造を持つ銀河は環状銀河(Ring galaxy)と呼ばれていて、NGC 922の他にも見つかっています。一例は南天の「ちょうこくしつ座」の方向約5億光年先にある「車輪銀河」(Cartwheel galaxy)で、最近では「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡による観測が行われました。

関連:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した「車輪銀河」の画像が公開された(2022年8月4日)

冒頭のNGC 922の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「広視野カメラ3(WFC3)」と、かつて搭載されていた「広域惑星カメラ2(WFPC2)」で取得したデータをもとに作成され、ハッブル宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)から2012年12月に公開されていたもので、アメリカ航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡Twitter公式アカウントが2023年5月16日付で改めて紹介しています。

 

Source

  • Image Credit: NASA and ESA
  • STScI – Hubble Sees a Galaxy Hit a Bull’s-Eye

文/sorae編集部

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