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火星探査車「Perseverance」のズーム対応カメラ「Mastcam-Z」で撮影された火星ヘリコプター「Ingenuity」(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS)
【▲ 火星探査車「Perseverance」のズーム対応カメラ「Mastcam-Z」で撮影された火星ヘリコプター「Ingenuity」(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)は現地時間4月30日、火星ヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ)」が4回目の飛行に成功したことを発表しました。火星での動力飛行が可能であることを証明したIngenuityのミッションは、今後新たな段階へと移行することになります。

今回の飛行は日本時間2021年4月30日23時49分に始まりました。「ライト兄弟飛行場」と名付けられた離発着地点を離陸したIngenuityは、これまでと同じ高度5mまで上昇した後に、南へ133m離れた地点への往復飛行(合計266m)に成功。飛行時間は117秒間で、距離・時間ともにこれまでの最高記録を更新しました。

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Ingenuityは2021年2月に火星のジェゼロ・クレーターへ着陸した探査車「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」の車体底部に搭載される形で火星に到着しました。4月3日に地表へ降ろされたIngenuityは、4月19日に高度3mでの30秒間のホバリングを含む39.1秒間の初飛行を行い、史上初となる火星での航空機による制御された動力飛行に成功しました。

続く4月22日に実施された2回目の飛行において、Ingenuityは高度5mで横に2m離れた場所まで移動する初の水平飛行(往復で合計4m)に成功。4月25日に実施された3回目の飛行ではさらに距離を伸ばし、往復100mの水平飛行に成功しています。

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Perseveranceのナビゲーション用カメラ「Navcam」で撮影された飛行中のIngenuity(Credit: NASA/JPL-Caltech)
【▲ Perseveranceのナビゲーション用カメラ「Navcam」で撮影された飛行中のIngenuity(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

■火星初の航空機によるミッションは次のステップへ

Ingenuityのカラーカメラによって3回目の飛行中に撮影された画像。左奥には離れた場所に停車中のPerseveranceが小さく写っている(Credit: NASA/JPL-Caltech)
【▲ Ingenuityのカラーカメラによって3回目の飛行中に撮影された画像。左奥には離れた場所に停車中のPerseveranceが小さく写っている(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

大気が薄い火星での航空機による動力飛行の実証という当初の目的を果たしたIngenuityのミッションは、将来の火星探査における航空機の運用、その可能性を探るための新たな段階へと移ります。JPLでは、Ingenuityの電力・通信・ナビゲーションといった各システムが予想以上のパフォーマンスを発揮していることから、Perseverance本来のミッションは優先させつつも、さらなるデモンストレーション飛行を計画しています。

火星探査に空中からの視点が加わることは、大きなメリットをもたらします。JPLによると、飛行技術の実証から運用技術の実証へと歩を進めるIngenuityは、Perseveranceが走行予定のルートや探査対象、Perseveranceが到達できないエリアなどを空中から観測する「偵察飛行」を行う可能性があります。Ingenuityには水平方向を撮影するカラーカメラのほかに、地表の特徴をもとに機体の位置・姿勢を把握するナビゲーション用のモノクロカメラが搭載されていますが、このモノクロカメラが撮影した画像からステレオ画像を取得して、いろいろな場所の標高を把握することも可能だといいます。

Perseveranceはサンプル採取を含む最初の探査を行うための移動を始めており、4月26日には南へ約10mの短い走行を実施しました。IngenuityもPerseveranceとともに移動する予定で、今後実施される5回目の飛行は新たな離着陸地点への片道飛行となります。この片道飛行を終えた後もIngenuityの状態が健全であれば、6回目の飛行からは新たな段階のミッションが始まります。地上の探査車を空からドローンが支援するという新時代の火星探査の光景が、間もなく現実のものとなるかもしれません。

Ingenuityのモノクロカメラによって3回目の飛行中に連続撮影された画像から作成された動画。地表の特徴に位置を合わせて合成されているため、Ingenuityの影が移動している(Credit: NASA/JPL-Caltech)
【▲ Ingenuityのモノクロカメラによって3回目の飛行中に連続撮影された画像から作成された動画。地表の特徴に位置を合わせて合成されているため、Ingenuityの影が移動している(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL / Ingenuity Blog
文/松村武宏

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