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高橋礼に米球界関係者「ヤバいね」、プレミア12優勝へのキーマン

2019 11/11 06:00楊枝秀基
高橋礼Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

1次ラウンド1位通過

上々の滑り出しといえるだろう。野球日本代表「侍ジャパン」が台湾で行われている「第2回 WBSC プレミア12」オープニングラウンド・グループBで3勝無敗の1位通過。7日の台湾戦に勝利したことで、11日から日本で行われるスーパーラウンドを1勝0敗でスタートする形となった。

5日のベネズエラ戦では八回までリードを許すも逆転勝利。6日のプエルトリコ戦では先発・高橋礼の6回1安打無失点の好投と鈴木誠也の3ランなどで4-0と完勝した。この時点でスーパーラウンドへの進出を決め、7日の台湾戦も勢いに乗り圧勝した。

「あのアンダースローはヤバいね」

大会開始前の侍ジャパンの評価は決して良くはなかった。米球界関係者は「2017年のWBCでも活躍した菅野や千賀の姿がないのは残念。日本としては戦力ダウンだね。打者に関してもメジャーリーガーもいないし、少しスケールが小さい印象は否めないね」と分析。ただ、6日のプエルトリコ戦の結果を受けて評価は激変した。

同じ米球界関係者は「あのアンダースローの投手はヤバいね。プエルトリコ打線がほぼ、バッティングをさせてもらえていなかった。タイプが同じかどうかは言い切れないが、かつての金柄賢(キム・ビュンヒュン・ダイヤモンドバックスなど)のようにボールに力のある下手投げ。米国戦では見たくないな」と高橋を警戒。プエルトリコ打線を六回二死までパーフェクトに抑えた事実は脅威に映ったようだ。

プエルトリコ指揮官も脱帽

当初は高橋には中継ぎ、第二先発としての起用が検討されていたという。しかし、先発起用を想定していた岸孝之投手が発熱のため登板回避。今季2年目で規定投球回数をクリアし、12勝を挙げた若きサブマリンにチャンスが巡ってきた。高橋本人もそれを見事にモノにしてみせた。

メジャーでMVPと本塁打王2回、打点王1回を誇るスラッガーだった、プエルトリコのフアン・ゴンザレス監督も「本当に素晴らしかった」と脱帽だった。国際大会となると日本のアンダースローとしては渡辺俊介(ロッテなど)、牧田(西武、パドレス)の名前が浮かぶが、高橋の名も世界に大きなインパクトを残した。

この活躍には、育ての親でもあるソフトバンク・久保二軍投手コーチは大きく頷いているだろう。大学3年時から本来の投球を見失っていたという高橋に対し、同コーチはじっくり向き合った。身体能力の高さ、ボディーバランスの良さを求められるアンダースロー右腕に対し、下半身を中心とした体幹トレなど地味で苦しいトレーニングを課した。さらに対話にも努めた。

「本人が納得するまで話をする。腕、腰の回転が理にかなっていれば、オーバースローもサイドスローも基本は同じ。これというものを掴むまで向き合った。1年目(2018年)は苦労したけど、今年は結果を出したでしょ。ハマれば初見ではなかなか打てないでしょうね。打者は苦労するでしょう」。久保コーチの言葉通り、初見のプエルトリコを翻弄。世界を驚かせてみせた。

国際大会、短期決戦では勢いやラッキーボーイの存在が不可欠。高橋はその有力候補といえる。スーパーラウンドではさらなる強敵との対戦となるが、その前には高橋が立ちはだかることになるだろう。2009年のWBC以来、世界一から遠ざかっている侍ジャパン。王座奪回へ向け、若きアンダースローの存在が大きなカギを握っているかもしれない。