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ウエイトリフティングのルール解説、スナッチとジャークの違いは?

2020 3/12 17:00SPAIA編集部
リオ五輪で銅メダルを獲得した三宅宏実Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ウエイトリフティングのルール

重たいバーベルを持ち上げる競技のウエイトリフティング、重量挙げだが、そのルールはあまり知られていない。大きなルールは2つ、体重と持ち上げ方だ。

ウエイトリフティング第一のルールは、体重制が設けられていることだ。重量挙げは体重による優位性があるため、ボクシング同様に厳しい規定が設けられている。

階級別に検量が行われるのだが、試合の2時間前から開始されるという厳しいルール。ボクシングは前日や試合当日の朝8時から行われるなど、計量から試合まで半日ほど余裕がある。一方、ウエイトリフティングはボクシング以上に体重が勝敗を左右してしまうため、試合直前に検量を行うことで試技の公平性を担保しているのだ。

体重の階級は、2016年のリオデジャネイロ五輪では男子が8階級、女子が7階級で実施された。その後、2018年11月1日より男女ともに10階級とする新しいルールが適用され、東京五輪ではその中から男女ともに7階級ずつが実施される。

体重の階級ごとにバーベルの重さが決まっているため、体格による不利はない。これによって公平なフィールドにおいて、選手は自分の能力を十分に発揮し評価されるスポーツとなっている。

またウエイトリフティングは、筋肉をつければこなせるスポーツと思われがちだが、体の柔軟性、瞬発力やタイミング、精神力など、ほかの競技と同様にアスリートとして多くの技術が必要となる。

「スナッチ」と「クリーン&ジャーク」

ウエイトリフティング第二のルールは、二つの種目「スナッチ」と「クリーン&ジャーク」だ。両種目の違いは持ち上げる方法で、単一動作か二段階動作かという違いがある。

「スナッチ」は、床に置いてあるバーベルを一息で頭上まで持ち上げて立ち上がる種目だ。一方、バーベルを頭上に上げるまで2つの動作を入れるのが「クリーン&ジャーク」。一回目でまず肩の高さまで持ち上げ(クリーン)、二回目で肩から一気に頭上まで上げる(ジャーク)。

頭上にバーベル持ち上げた後は、両種目とも両肘を伸ばした状態でレフリーの合図があるまで静止していなければならない。合図より前にバーベルを降ろしてしまうと失敗と判定される。プラットフォームへバーベルが正しく落とせない場合や、体の後ろへ落としてしまった場合も失敗となる。

試技はそれぞれ3回ずつ行われ、成功した重量の合計で勝敗が決まるというわかりやすいルールだ。ただし、成功、失敗の判断は、3人の審判と5人の陪審により厳しく判定される。動きがスムーズか、また体とバーベルが平行かなど細かい判断が下され、ただ重いバーベルを持ち上げれば認められるというものではない。

もともとウェイトリフティングは、オリンピックにおいて体操競技のひとつだった。1920年に独立種目となり、体重制や種目の細かなルールが定められた。このことから、ウェイトリフティングが床運動やあん馬と同じく、動作の美しさや安定性について大きく評価されるのも頷けるだろう。

選手は力同様、滑らかな動作によって周囲を納得させる必要があるのだ。怪力と美、一見無関係のような事柄だが、ウェイトリフティングではバランスよく身に付けなければならない大切なポイントであるといえる。

有名選手や日本人メダリスト

ウエイトリフティングの世界選手権は、毎年一回開催地を変えて行われる。メダル獲得数は中国とソビエト連邦が圧倒的に多く、3位以下を大きく引き離しているという現状だ。その中でも日本は14位と健闘しており、近年は三宅宏実が2015年に世界選手権の48kg級で3位という好成績を収めている。

三宅はオリンピックにおいても連続してメダルを獲得した。2012年のロンドンオリンピックでは48kg級銀メダル、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは48kg級銅メダルという輝かしい成績を残している。

また、八木かなえや安藤美希子も、2000年以降に世界選手権やオリンピックにおいて好成績を残しており、3人とも2020年の東京五輪での注目選手として活躍が期待されている。

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