NGなしの完璧主義者 田村正和さん 休みも外出せずワイン飲みながら歴史小説

[ 2021年5月19日 05:34 ]

田村正和さん死去

人気ドラマシリーズ「古畑任三郎」を演じた田村正和さん(フジテレビ提供)
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 眠狂四郎や古畑任三郎…。幅広い役を演じ切るため、田村さんは徹底的に台本を読み込む“役者バカ”でもあった。

 故阪東妻三郎の三男。父親への憧れが原動力で、父譲りの情熱で演じ続けた。1972年にフジテレビ系のドラマ「眠狂四郎」が始まった時は「器用じゃないからいろんな役をやりたくない」というほど役にはまり込んだ。生涯でほとんどNGを出さなかったのも完璧主義を貫いたからだった。相手のセリフまで覚えて現場に臨んだ。

 中でも象徴的なのは94年4月に始まった全42回放送の初の刑事ドラマとなった「警部補・古畑任三郎」だ。基本的に1話完結で、毎回ドラマの冒頭で犯人が分かった上で物語が進み、古畑が最後に独り語りで謎解きを行う。毎回、尋常ではない量の長ゼリフだったが、当時を知る制作スタッフは「謎解きはクライマックスですし、最大の見せ場。セリフもたたみかけるように話す。田村さんも“こんなにしゃべることない”なんて現場で苦笑いしていました」と振り返る。

 田村さん自身も、5時間以上にわたって自宅でセリフを覚えてからスタジオ入りして収録に臨んだ。作品を手掛けた脚本家・三谷幸喜氏からの挑戦状のような“脚本”を毎回、納得行くまで読み解いた。

 数カ月間の休みがあっても自宅からほとんど外出することはなく、ワインやビールを飲みながら歴史小説を読んだり、音楽を聴いて穏やかに過ごすことが好きだったという。オフでも徹底的に身だしなみに気を使っていたのも田村さんらしい。過去のインタビューでは「仕事が終われば真っすぐ家に帰る真面目人間なんだよ。ヒマな時間があれば台本を読んでるかな」。どこまでも役者にささげた人生だった。 

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