「ライオンズ七不思議」、貧打の炭谷銀仁朗が3割バッターに変身の怪

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 打率.375――。

2013年ドラフト1位で西武に入団した森友哉が今季、「強打の捕手」として躍動中だ。開幕戦から5番に座り、18試合74打席時点でリーグ2位の打率を残すだけでなく、守備面でもキャッチングやスローイングが向上し、首位をいくチームの原動力となっている(成績は4月24日昼時点)。

今年の炭谷銀仁朗はバッティングでもチームを引っ張っている今年の炭谷銀仁朗はバッティングでもチームを引っ張っている「僕に森以上のバッティングをしろと言っても無理な話ですよ。そんなもんは僕自身も求めていないです」

 2017年、春季キャンプ前にそう話していたのが炭谷銀仁朗だ。8歳下、球界トップクラスの打力を誇る森との正捕手争いについて、どう感じているかと尋ねた際のことである。

 この年は開幕前に森が負傷し、本格的なレギュラー争いは翌年に持ち越された。そして今季、森が捕手として存在感を高めれば高めるほど、相対的に炭谷は影を薄めている。

 現在の西武は先発投手によって捕手を使い分け、エースの菊池雄星、ウルフ、先発6番手の榎田大樹と、配球で抑えていくタイプとは炭谷がコンビを組み、森は指名打者で出場する。一方、十亀剣、カスティーヨ、多和田真三郎と、力投タイプは森がリードする。ウルフが右ひじの故障で4月16日に登録抹消となり、さらに日程的に6連戦がここまで1度しかなく、炭谷はベンチを温める試合が増えている。

 高卒1年目の2006年開幕戦から先発マスクをかぶり、西武の投手陣を長らく牽引してきた炭谷は、打率こそ毎年1割台~2割台前半ながら、球界最高峰のスローイングとインサイドワーク、キャッチング、そしてコミュニケーション能力を兼ね備える「守りの捕手」としてレギュラーを張ってきた。

 そんな炭谷の前に颯爽(さっそう)と現れたのが、2013年ドラフト1位で指名された「打てる捕手」の森だった。高卒1年目から一軍でも通用するほどの打力を誇り、外野手や指名打者で起用されることもあったが、チームは捕手として育てることに決める。そして今年、類(たぐい)まれな才能を発揮しているのだ。

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