ファイターズがCS敗退するも、
栗山英樹は人知れず未来へ種を蒔いた

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

「送りたかったね、最後ね......」

 栗山英樹監督はそう呟いた。

 勝った方がファイナルステージに進むことができるパ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第3戦。2-5とホークスにリードを許し、3点を追うファイターズは9回表の攻撃を迎えていた。

ソフトバンクに1勝2敗で敗れ、CS敗退となった日本ハム・栗山英樹監督ソフトバンクに1勝2敗で敗れ、CS敗退となった日本ハム・栗山英樹監督 ツーアウトから7番の鶴岡慎也がライト前ヒットで出塁し、バッターボックスには8番の田中賢介がいた。そして、ネクストバッターズサークルには、清宮幸太郎――このステージ、オズワルド・アルシアがDHに入り、好調をキープしていたため、清宮はスターティングラインアップから外れていた。その清宮が最後、代打として準備をしていた。田中が出塁すれば、ホームランで同点、というシチュエーションが用意される。

 しかし、それは叶わなかった。

 田中がセカンドフライを打ち上げ、試合は終わった。清宮に劇的なドラマを描くチャンスは巡ってこなかった。その場面を振り返って、清宮をそういう局面でバッターボックスに「送りたかった」と、栗山監督は言ったのだ。

 2018年のファイターズ、じつは開幕前の下馬評は最悪だった。

 一昨年、日本一に輝きながら、去年は23もの借金を背負っての5位。しかもオフには大谷翔平、増井浩俊、大野奨太の主力3人が抜けた。開幕前の順位予想は軒並みBクラス、その多くが最下位という逆風の中、思えば栗山監督はキャンプ中、こんな話をしていた。

「誰かが抜ければ、誰かが出てこざる得なくなる。じゃあ、誰が出てくるのか。それはオレが、選手ひとりひとりの野球を見ようとするところから始まってるんだよね。『うわっ、コイツ、すげえや』ってところが、みんなにある。それを見て、気づくことが選手のためにもなるし、チームが勝つことにもつながる。堀(瑞輝)とか、チョク(石川直也)とか、横尾(俊建)にしてもナベ(渡邊諒)にしても、今、流れを感じさせてくれているじゃない。そういう選手がきっかけをつかみかけているときに、ポンと乗せてやるのがこっちの仕事なんでね。このチーム、絶対に勝負できると思ってるよ」

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