トンデモ暴力事件の陰で、名波ジュビロは
理想的なサッカーをしていた

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 勝者であるジュビロ磐田の名波浩監督の試合後会見は、謝罪から始まった。

「まず、スポーツ選手としてあるまじき行為を試合中にしたというその厳然たる事実、これはチームを預かる身として、マリノスの選手たち、サポーター、関係各位の皆さま、それからジュビロに関わるすべての皆さまにお詫びしたいと思います。申し訳ありませんでした」

今年の目標を「トップ5」と語るジュビロ磐田の名波浩監督今年の目標を「トップ5」と語るジュビロ磐田の名波浩監督「あるまじき行為」をしたのは、ブラジル人サイドバックのDFギレルメだった。80分に2枚目の警告を受けて退場となると、突如怒りの導火線に着火し、対戦相手である横浜F・マリノスのMF喜田拓也に左足キックをお見舞い。さらに乱闘を止めに入った相手スタッフにも殴りかかる暴挙に出たのだ。

 もはやスポーツとは言えない"暴行事件"は、サッカーを汚し、ファンを裏切る背徳行為である。5月2日に日産スタジアムで行なわれた横浜FMと磐田の一戦は、実に後味の悪い結末を迎えた。

 ひとりの愚か者によって試合内容以外の部分がクローズアップされることとなったが、試合自体は白熱した好ゲームだった。とりわけ勝った磐田のパフォーマンスは称賛に値するもので、そこには蛮行を働いたギレルメも含まれる。もちろん、事件が起きるまでは、であるが。

 2試合勝ちがなかった磐田に対し、横浜FMは前節、鹿島アントラーズに快勝(3−0)を収めていた。順位こそ劣っていたが、その攻撃スタイルやホームゲームであることを踏まえても、横浜FMのペースで試合は進んでいくかと思われた。

 ところが、立ち上がりから積極性を示したのは磐田のほうだった。ボール支配率こそ譲ったものの、ボールホルダーに対する素早いプレス、球際の攻防、あるいは切り替えの速さで相手を上回り、シンプルなショートカウンターから次々にチャンスを生み出していく。

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