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28才で子宮頸がんに。闘病、不妊治療、出産を経て議員になったあるママの挑戦

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撮影/矢作常明

今年4月に江東区議会議員に当選した、酒井なつみさん。もともと看護師、助産師として働いていた酒井さんが議員を志すきっかけになったのが、28歳のときになった子宮頸がん(しきゅうけいがん)でした。現在1児の母として、議員として活躍する酒井さんに、たまひよONLINEが話を聞きました。

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妊娠を望むさなか子宮頸がんに。夫にも言えなかった…

看護師、助産師と赤ちゃんやお母さんを支えるキャリアを積んでいた酒井さん。27才で結婚後、子どもを望んでいた矢先に、子宮頸がんが発覚したといいます。
「異変に気づいたのは、不正出血が続いたのがきっかけでした。2年に一度の検診では問題はなかったものの、妊娠を望んでいたので一度ちゃんとみてもらおうと婦人科クリニックを受診した際、がん細胞が見つかりました」

子宮頸がんは通常、軽度から高度の異形成を経て、数年かけて進行するケースがほとんどですが、詳しい検査の結果、酒井さんは非常に珍しく進行も速い「子宮頸部すりガラス細胞がん」だと判明します。
「すでに子宮や卵巣を全摘する必要があるステージだと言われ、本当にショックで…。妊娠を望んでいた矢先だったので、当初夫にもすぐに打ち明けられませんでした。でも手術先として紹介された病院で、主治医から、『もしかしたら子宮が残せるかもしれない』と言われたんです」

ただ、病院では「トラケレクトミー」という子宮温存手術は前例がほとんどなく、夫や家族からは「あなたの命のほうが大切だから」と反対を受けたといいます。
「でも、子どもを持つことは長く夢だったのでどうしてもあきらめられなくて。『任せてくれませんか』とおっしゃった先生を信じ、わずかな可能性にかけてみました」

手術は無事成功し、酒井さんは子宮の一部を残すことができましたが、再発の危険性を考慮し、術後に抗がん剤治療を受けることに。副作用に苦しみながらも、なんとか仕事も続けた酒井さん。治療を完了し、落ち着いたところで、次は、妊娠に向けて産婦人科を訪れます。ところがここでも新たな試練が待っていました。

不妊治療や流産の体験から世の中を変えようと決意

「抗がん剤治療の影響もあり、卵巣年齢、卵巣予備能を調べるAMH値が閉経間近といえるほど低下していることがわかりました。妊娠できる可能性は低く、半年と期限を決めて高度不妊治療に挑戦するしかないと言われ、がん治療が不妊に与える影響の怖さにがくぜんとしました」

治療はホルモン剤を大量に投与し体外受精や顕微授精(けんびじゅせい)を併用して行うもの。毎回高額の治療費がかかりました。しかもようやく授かった命を7週で流産してしまい、酒井さんは、体力的にも精神的にもとても苦しい数カ月を過ごします。
流産後しばらくは体外受精を休みつつ、酒井さんは無理だと言われた人工授精を試してみることに。三度目で妊娠し、切迫流産(せっぱくりゅうざん)・早産を乗り越え、2017年に待望の長女を出産しました。

この壮絶な体験は、酒井さんの人生を大きく動かしました。
「思いがけずがんになり、私の人生は一変しました。つらい体験もたくさんしましたが、同時にこの経験を無駄にしたくない、同世代の女性やお母さんがもっと安心して暮らせる世の中にしたい、と強く思うようになったんです」

婦人科検診をもっと身近なものにし、病気や不妊の治療と仕事を両立できる暮らしやすいまちづくりに貢献し、それを伝えていきたいと、酒井さんは今年4月に区議会議員に立候補し、当選。
「こうして、新しい一歩を踏み出せたのも、病院の先生や家族、上司や同僚がいつも支えてくれたから。生かしてもらった命を大切に、子育て世代の女性がもっと生きやすくいられるよう、私にできることをしていきたいと思っています」

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20・30代の女性のがんで最も多いのが「子宮頸がん」です。ママになると子ども優先で自分のことは後回しにしがちですが、自治体の検診なども活用しつつ、1年に1回は検診を受けてほしいと、切に願います。

(取材・文/玉居子泰子、ひよこクラブ編集部)

Profile●酒井なつみ
1986年福岡県生まれ。看護師、助産師とキャリアを積み、母子支援に携わる。2017年に長女を出産。19年4月江東区議会議員に当選。


参考:「ひよこクラブ」2019年7月号「ちゃんと知っておきたい ママのがんと検診のこと」

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