あの幻のガウンは今――。所在不明となっていたプロレス界のスーパースター、アントニオ猪木さん(享年79)が愛用したガウンを、まな弟子の〝悪魔仮面〟ことケンドー・カシンが発掘し、保管していたことが、6日までにわかった。見つかったのは、1998年4月4日の引退試合で着用した「闘魂ガウン」を含む3着。緊急取材に応じたカシンは、その収集にまつわる経緯とガウンへの思いを語った。

 カシンが保管したガウンは、1998年4月4日に東京ドームで行われた引退試合で着用した白地に「闘魂」の文字が施されたもののほか、2着ある。白地で背中に富士山が描かれたガウンと、黒地で金色の鳳凰が大きく翼を広げたものだ。

 その手元に貴重な3着を置くことになった経緯について、悪魔仮面は「ご遺族の方から『散らばっている7着のガウンを集めてほしい』と言われたからです。なんでも、7個すべてを集めると、どんな願いでもかなうらしい」。こうして、昨年10月の葬儀・告別式の後から秘密裏に〝ガウン回収プロジェクト〟をスタートさせ、東奔西走の日々に入った。当時を振り返り、カシンは涙ながらにこう話す。

「所有者が売ってしまったり、譲ってしまったりで、各地に散らばっていて大変でした。それでも交通費、宿泊費など身銭も切って、いろんなルートを使って所有している方に会いに行って交渉して、時に頭を下げてなんとか集めたんです。どんな思いだったか? 『なんでIGFと新日本がやらないんだよ。お前らがやれよ』って思っていました」

 日本全国に散らばったガウンを集めるプロジェクトは「時に身の危険を感じるような出来事もあった」と想像を絶する困難だった。それでも3着を集めたカシンは「『これ以上集めるのは無理だ』となって、ご遺族に返そうとしたんです。そうしたら『預かっていてほしい』と言われてしまった。『嫌だ、こんなもの。絶対にいいことがないから持っていたくない』って言ったけど、結局、青森の実家で保管することになって…。ガウンへの思い入れ? 全くない」と明かした。

 この意向を受けて桐の箱に入ったガウンを青森の実家まで運んだ。その際に「圏央道で100キロ制限だと思って走っていたら、80キロ制限のエリアでスピード違反でつかまって切符を切られた。取り締まりの警察官に『もうちょっといけば100キロ制限だったんですけどね』って笑顔で言われた」とのアクシデントもあったが、ガウンはなんとか無事に青森へたどり着いた。

 最終的に、遺族の意向でガウンは千葉の外房に住む〝野獣〟藤田和之邸に移管されることが決定。師のガウンと離れることになったカシンは「結局、俺の手元に残ったのは違反切符だけでした」と笑った。