【元局アナ青池奈津子のメジャー通信・特別編(1)】ドジャース・大谷翔平投手(29)の新天地でのキャンプが9日(日本時間10日)からスタートした。自身初のプレーオフ進出、ワールドシリーズ制覇はなるのか。両リーグでのMVP、本塁打王に輝くことはできるかなど注目ポイントは多い。日米、いや世界中の野球ファンが熱い視線を送るに違いない。実はメジャーリーガーたちも同様で、日々の取材の中で選手たちからリスペクトや憧れを感じてきた。そこで昨季、折に触れてある質問を投げかけてみた――。

「102マイル(約164キロ)出せる投球力がいいかな」と答えたのはエンゼルスのマイク・トラウトだった。「打撃はそこそこカバーできていると思うから、投げる能力があったら二刀流やりたいさ」。大谷と2018年から6年間チームメートとして接した実感なのだろう。

 マリナーズのフリオ・ロドリゲスは「投球できるのはクールだと思うから、それができたら二刀流をやりたいけど、それと同じくらい日本語が話せたらすてきだろうなって思う。日本の文化をとても尊敬しているし、もっと知りたい。日本へ行って隔てなく感じることを感じたい。自由に話したい」と思慮深さをのぞかせた。また、ライバルであるブルージェイズのウラジーミル・ゲレロは「彼のビジョン!」と即答した。

 さらには昨季限りで現役を引退したミゲル・カブレラだ。MLB通算21年、3174安打を積み上げた男は「エブリシング。全てをやれる彼の能力が自分にもあったら引退を先延ばしにして二刀流やるよ」だった。

 何を尋ねて回ったのか、もうお分かりでしょうか。選手たちに聞いたのは「大谷翔平のフィーチャー(特性)を自分に1つ取り入れることができるとしたら何がいいか?」だ。

 日ごろの取材と並行して聞いたので人選はややランダムだが、気がつけば集めたコメントの数は選手とOBを合わせて138人。その人の個性を表すような回答が多く、聞くのがどんどん楽しくなっていった。

 この質問を思いついたきっかけは、どんな話題にも常に気持ちよく答えてくれるテーラー・ウォードだった。エンゼルスの番記者にとっては「神」のようなナイスガイだ。

質問のきっかけとなったエンゼルス・ウォード(ロイター=USA TODAY Sports)
質問のきっかけとなったエンゼルス・ウォード(ロイター=USA TODAY Sports)

 現場ではどうしても大谷絡みの質問になりがち。しかし「遠慮はいらんぜよ」と対応してくれる彼に、何度も助けられてきた。だからこそ、せめて少しでも楽しんでもらえる質問はないかと模索を続けた。そんな中、昨年5月に「大谷フィーチャー」の質問をすると、テーラーは初めて聞かれた様子だった。そして、少し考えて「うん」とうなずき「自分は打者だから、バットから飛び出るショウのパワーがいいな。彼のパワーが10なら、自分は6か6・5くらい。いつもショウぐらい飛ばせたらなって思う」と、大谷のロッカーの方へ目線を向けた。

 ちょうどその様子を隣にいたブレット・フィリップスが、興味深そうに聞いていた。ブレットは一時、大谷が本塁打を放った際の〝かぶと係〟も務めていた。そんな彼にも同じ質問を向けると「僕は彼の『ディシプリン』(規律正しさや自己管理力)と勤勉さがいいな」。ポジティブを絵に描いたようなブレット、エネルギーを補充したかったら彼に話をしに行くのがいい。「ショウヘイの動きは構造化されていて、ルーティンに無駄がない。これまでも何かしら盗めないかと観察して、マネしてみたり。それが何かは僕だけの秘密だけどね」といつもの満面の笑みで回答してくれた。

 ここでブレットの答えに「へえ~」とうなずいていたテーラーが「その質問、みんながどんなふうに答えるか僕も知りたいな」と目を輝かせた(ように見えた!)。

 この反応に後押しされ、守護神を務めたカルロス・エステベスとの会話中に聞くと「そりゃ、もちろん打撃能力でしょ! 自分はチェンジアップが打てなくてピッチングを始めたんだ。打てないから投げ続けようって。ショウヘイくらい打てたら、二刀流やりたいに決まっている」

 さらに、その日の〝ダメ押し〟は、ベンチコーチのレイ・モンゴメリーだった。コミュニケーション力が高い人物で、よく「今は何を追っているんだい?」と聞いてくれるのだが、前述3人の話をすると、したり顔で「そりゃ、どう考えたってイッペイ(通訳の水原一平氏)でしょ」。

 選手たちに協力してもらった話を紹介していこうと思う。