なぜ、これほどまで鷹にマッチしたのか――。今季からソフトバンクにFA加入した山川穂高内野手(32)が、心身ともに充実した宮崎キャンプを終えた。A組最終日の28日は古巣・西武との練習試合(アイビー)に「4番・DH」で出場。第1打席でいきなり2ランを放ち、本塁打王3度の貫禄を示した。

 試合後の本人は「本当にたまたまです」と殊勝に話したが、小久保監督は「西武戦で意識しただろうけど、1打席目にホームランを打つところがさすが。集中したからといって打てるもんじゃない。やっぱり技術。飛ばす力とミートする技術があるから」とたたえた。宮崎での実戦は11打数6安打、2本塁打。結果からも充実ぶりがうかがえる。

 無休でキャンプを完走。新天地でも西武時代と変わらぬルーティンを貫いた。「選手の皆さんやファンの皆さんに温かく迎えてもらって、自分のペースで練習することができた」と、心の安定が調整の質を上げた。

 昨年5月に私生活で女性問題が発覚。西武から無期限の公式戦出場停止処分を受けた。オフに国内FA権を行使してホークスに移籍。結果的にファンの理解が進まない中での決断となり、批判の声は今も根強い。ただ、この日、球場のどこからともなく本塁打パフォーマンスに合わせて「どすこーい!」の大合唱が沸き起こったのも事実だ。

 チーム内では、キャンプ序盤ですでに溶け込んでいた。侍ジャパンでともに戦った選手会長の周東佑京内野手(28)は、その理由をこう明かす。

「僕らの知っている山川さんが、そのまんまの姿で、向こうから近づいてきてくれたからだと思います」。取りつくろったところですぐに見抜かれる。チーム内でも「変なよそよそしさはいらない」との声があった。育成選手ら若い選手が多い球団。時代の変化に合わせ、チーム内の無用な派閥意識は消え、若手がベテランの目の色をうかがって萎縮するような空気は一切ない。その土壌に、山川が猫をかぶらずに飛び込んできたことで歓迎されたという。

 充実の宮崎キャンプを終えても「(人間関係を含めて)まだまだ手応えや自信を深められたという感じは正直ありません。なぜなら僕は、やっぱり結果で返すしかないんで。この先、一日一日の結果。それしかない」と語った山川。全員が納得する「戒め」の形は難しくとも、後押ししてくれる仲間は増えている。