【伊原春樹・新鬼の手帳】順当な結果だ。巨人の先発はエースの菅野を差し置いてシーズンを通して主戦として投手陣を引っ張った山口。一方の阪神は今季8試合しか登板していない4年目の望月。経験や実績が違いすぎる。その差がそのまま結果となった。

 伸び盛りの望月の若さに期待しての抜てきだったのだろうが、いくら150キロを超える直球があるとはいえ、制球が悪すぎる。初回、先頭の亀井にいきなり四球を与え、2番・坂本勇を併殺に打ち取ってほっとしたところで丸にカウント3―2から一発を浴びた。捕手の梅野は内角に構えたが、望月の今の力量では内角に投げきれない。案の定、一番打ちやすい外角高めに来てガツンとやられた。

 巨人はシーズン最終戦から中10日も実戦から遠ざかっており、実戦慣れしていないことが唯一の不安だった。しかし丸の一発でシーズンの感覚をスムーズに取り戻し、普段通りの巨人となった。期待値込みの冒険的な起用は短期決戦でははまらない。CSはそんな甘いもんじゃない。望月の起用は無謀だった。それなら2番手で好投した岩貞を先発させたほうがよかったのではないか。

 一方、巨人打線に目をやると岡本、坂本勇と打つべき人がキッチリ打った。丸に続き、本塁打を放った岡本は史上最年少で「3割30本塁打100打点」を達成した昨季、CSでは18打数1安打1打点と一転して大ブレーキ。4番の重圧に苦しめられた1年前の嫌なイメージが残っていたろうが、この一発で気持ちが晴れただろう。今季のCSでは4番の働きをしてくれるはずだ。ただ、岡本の活躍も1年前に苦しんだ経験があったからこそ。今回の登板は荷が重すぎた望月だが、この経験はきっと将来につながるはずだ。

 とにかく、アドバンテージも含めて2勝した巨人は断然有利。3連勝もあり得るし、ひっくり返ることはないだろう。(本紙専属評論家)