令和最初の頂点に立つのは――。日本シリーズは19日からヤフオクドームで始まる。ソフトバンクは同じ顔合わせだった19年前の「ON対決」で悔しい思いをした王貞治球団会長(79)が誰よりも心を熱くしている。

 2000年の「ON対決」のリベンジへ――。決戦前日の全体練習中、グラウンドを訪れ、静かに闘志を燃やしていたのが王球団会長だ。多くの報道陣を前に「ここまで来ちゃうとあれだけど、やりたい、やりたいってずっと毎年考えていたからね」と話すにとどめたが、体内を流れる血は熱くたぎっている。周囲も「すごく気持ちが盛り上がっているのが伝わってきます。この日本シリーズが終わったら、ぐったりしちゃうんじゃないかと心配しているほどです」と証言する。

 王会長は今でも本拠地ヤフオクドームの試合をほとんど欠かさず観戦する。野球に対する情熱は誰にも負けない。「『ときめくもの』というのは年をとるとともにだんだん少なくなってくるんだけどね。その点、僕は野球というものは飽きないで今でもドキドキして見ているよ」。長年の悲願でもある巨人との日本シリーズともなれば、ときめきはMAXだ。

 勝算はある。前回は福岡移転後の初優勝からパ・リーグを連覇しての対戦だったが、常勝ホークスの歴史の中ではスタート地点でもあった。今回は昨季に続いて2位からの日本シリーズ進出ながら、過去5年で4度の日本一は真の常勝軍団でなければ成し遂げられるはずもない。王会長も「チームの力も2000年の時より総合力で上回っている」と胸を張る。

 それこそ巨人にリベンジして日本一3連覇、6年で5度の日本一となれば1980~90年代初頭の西武、さらにはV9巨人以来とも言える長期の黄金期となる。王会長も「そうだね。もちろん、短期決戦は必ずしも強いチームが勝つというわけではないけれど、結果としてね。秋山監督、工藤監督と(うまくやってくれている)」と、うなずく。その上で共通点、要因についてもこう話す。

「選手たちもその気になっている。特別な感情を抱かないで、CS、日本シリーズに出て、試合に入ってくれるようになってきたからね。選手たちも『ここに出るのは当たり前』みたいなね。特別なものという感じはしてないよね」

 巨人で主力打者としてV9をけん引した王会長自身にとっても日本シリーズの大舞台は「打ち方を変えるとか、できるように見えてできないんだよね」と特別なものだった。その上で「平常心」で臨むことを重視していたという。今や大舞台でも普段通りの野球ができるようになったのは鷹ナインの強みだ。

 グラウンドで王会長から「頼みますよ」と託された工藤監督は「はい、頑張ります」と応じ「あのとき(2000年)はジャイアンツの選手だった。ホークスの監督として勝ちたいと思う」と腕をぶした。いよいよ決戦の火ぶたが切られる。