日本シリーズ第2戦が20日、ヤフオクドームで行われ、巨人は3―6でソフトバンクに連敗した。巨人は、一軍に緊急昇格したばかりの村田修一打撃コーチ(38)を経由する急造の新指揮系統を満足に試運転できないまま22日の3戦目に突入することになった。

 巨人は零封負けを阻止するのがやっとだった。9回に3点を返したが時すでに遅し。中盤までの打線の大ブレーキで大勢は決した。サブマリン右腕・高橋礼攻略へ、下位打線に両打ちの若林を含む左打者を重点的に並べたが、独特な球筋に対応できず、7回二死から岡本にチーム初安打が生まれるまで準完全試合投球を許した。

 先発メルセデスも負けじと6回無失点の快投を演じたものの、継投に入った7回に暗転した。途中出場の三塁手・山本の失策を引き金に2番手・大竹が松田宣に特大の先制3ランを被弾。桜井、高木の救援陣全員が失点を重ね、試合後の原監督は「やられたら、やり返す。もう、その一点ですね」とさっそくのリベンジ宣言に力を込めた。

 ただ、連敗スタートの原巨人ではベンチワークの中枢にも“支障”をきたしている。発端となったのは日本シリーズ開幕直前の鈴木前外野守備走塁コーチの電撃退団だ。配置転換を余儀なくされた原監督は、日本シリーズから一塁コーチャーに後藤打撃兼外野守備コーチを配置。同コーチは夏場から指揮官がベンチで出す指示を三塁コーチャーの元木打撃兼内野守備コーチに伝達する役割も担っていた。その後藤コーチの一塁コーチャーへの“異動”に伴い、新たな伝達役を託されたのがファームから緊急昇格した村田修コーチだった。

 ただ、村田修コーチは長い野球人生の中でもサインを出すのは初めてだそうで「サインを覚えること自体はそんなに難しくはないですが、間違えずにゆっくりと正確に手を動かすことは難しいですね。監督の意思をしっかりと元木さんに伝えなければいけない。僕は相手にバレないで出す目的ではないですから。部屋の鏡を見ながら練習しました」という。

 鈴木前コーチ退団による玉突き人事で、新指揮系統は原監督↓村田修コーチ↓元木コーチ↓選手となったわけだが、いかんせんぶっつけ本番でいきなりの大舞台だ。3戦目以降は指揮官が繰り出す奇策、複雑なサインが飛び出すケースも増えるだろう。しかし、攻撃陣が出塁できなければ、ベンチだって動きようがない。この日も5回まで塁に出られず、チャンスらしいチャンスは9回ぐらい。初戦も6回までの出塁は阿部のソロ一発だけで、ホークスベンチを揺さぶるどころではなかった。

 実際、ベンチ入りメンバーから「この2試合は監督のサインはほぼ出ていない。というか、出しようがない戦況だった」との証言もあった。村田修コーチからのサインを受け取る元木コーチは「大丈夫。問題ない」と強調したが…。試運転もできないまま本拠地・東京ドームに戻り、22日の第3戦に臨む。崖っ縁に立たされる前に、何とか流れを変えたいところだ。