現役通算224勝の工藤監督が一目見てほれ込んだ強心臓左腕に待望のプロ初勝利だ。ソフトバンクの4年目・田浦文丸投手(21)が11日の楽天戦(楽天生命)に1―0の6回から3番手で登板し、2回1安打無失点でウイニングボールを手にした。

 2017年ドラフト5位で入団。熊本・秀岳館高時代に甲子園を沸かせ、U―18日本代表でも活躍した。強気なスタイルで投げ込むチェンジアップが最大の武器。ダルビッシュ(パドレス)がツイッターで「肩がもげる」という独特の表現で絶賛した。超一流に認められたことで自信を深めた伝家の宝刀は、磨きをかけ続けている。

 高卒2年目で一軍を経験したが、昨季は腰痛などの影響から二軍戦わずか1試合の登板にとどまった。投げられない悔しさをかみ締めると同時に、昨オフのショッキングな出来事が左腕を強く、たくましくした。「聞かされた時は自分のことのように落ち込みました」。昨年11月、同期のドラ1・吉住晴斗投手(21)が戦力外通告を受けたのだ。

 ただの「同期」ではなく「親友」と呼べる仲。常勝軍団の厳しさや故障、不振の悩みを語り合い支え合ってきた。「本当に辞めないでほしい」。だが、親友の苦悩を知っていたからこそ腹をくくった。

 引退に傾いていた吉住はその後、先輩の石川柊太投手(29)を介してダルビッシュから翻意を促す連絡を受けたことで現役続行を決意。育成選手として再スタートを切った。2人の望みは「一軍での継投」。口数は少ないが情の厚い21歳は、遠く離れた仙台から親友へ熱いエールを送った。