投手陣の再建が急務だ。10日現在リーグ2位につけている巨人の原辰徳監督(62)の手腕が球界内から注目を集めている。エース・菅野と守護神・デラロサの離脱に加え、リリーフエース・中川の不調など、投手陣の課題が山積。他球団からは「投壊」を予期する声さえも上がっている。今季最大のピンチを、名将はどう乗り切るのか――。

 チーム状況は苦しい。野手ではここまで2割9分9厘の高打率を残していたキャプテン・坂本が親指の骨折で離脱となり、右ヒジの違和感ですでに離脱しているエース・菅野と合わせて、投打の要が不在の状態に…。守護神・デラロサは米市民権取得のため離脱中で、昨季防御率1・00と抜群の成績を残したリリーフエース・中川も、今季は防御率は4・32と波に乗れない。

 そのほかの投手もピリッとしない。開幕から無敗の5連勝を記録している高橋を除き、先発ローテーションを唯一守っていた今村もここにきて失速気味で、4月11日の広島戦以来勝ち星から遠ざかっている。救援陣も安定感を欠き、9日のヤクルト戦では田中豊、桜井らが制球に苦しみ一時逆転を許した。勝ちこそしたものの、試合後に原監督は「リリーフ陣がね、自分の中で超えなきゃいけないというプレッシャーがあるのかな、という気がします」とチクリ。押し出し死球を与えた桜井はこの日登録を抹消された。

 守護神も不在の中、現状の代役はここまで14試合に登板して防御率2・70の鍵谷で、指揮官も「今の状態なら鍵谷。(試合状況が)同点、もしくは同点以上なら」と明言。14試合に登板していまだ失点なしの高梨と、計算できる救援投手はこの2人のみという状況だ。

 台所事情に苦しむ巨人へ、他球団からはかねて「投壊」の可能性を指摘する声が上がっていた。ある他球団関係者は以前に「桑田コーチの指導方針の下、今季の巨人は完投型投手の育成を進めていますよね。これが後々ブルペン管理を難しくする可能性はあると思います」と指摘する。

 今季の巨人は先発投手が「中6日を135球で完投すること」を目標に、より長いイニングを投げ切るようにしており、実際にチーム別完投数は「3」でリーグトップの好成績を残している。

 ではなぜ「完投型投手の育成」がブルペン管理の難しさを生むのか。「完投のメドが立つような投手が先発する日は、救援陣も心のどこかで『今日は休める日だな』と隙が出てしまうものです。うれしい悩みではあるでしょうが、完投型投手が増えれば増えるほど、ブルペン陣の気持ちの保ち方は難しくなってくるはずですよ」とは別の球界関係者。当然、プロの投手としてマウンドに上がる以上は言い訳は何一つできないが、ブルペンの管理が例年以上に難しくなっていることは間違いない。

 その指摘通り、今季の巨人は先発防御率がリーグ2位の2・90としながらも、救援防御率はリーグワーストの3・91と大きな開きがある。

 週末には首位・阪神との直接対決が控えており、〝G投〟再建は待ったなしの状態。これまでも様々な局面を乗り切っていた名将が、今回はどのような〝原マジック〟を見せるのか、その手腕に注目が集まる。