伝説のAV監督・村西とおる氏を描いた「全裸監督 シーズン2」がネットフリックスで配信され、注目を集めている。世界190か国に同時配信されており、主演の山田孝之も「世界でも通用するみたいだよ、という再確認ができた」と明かしている。その「全裸監督」の原作者が取材に応じた。

「全裸監督」の原作者の本橋信宏氏は「そうだ、ハリウッドに行く必要はない。ここがハリウッドだから。2年前に配信されたシーズン1を超えた傑作に仕上がっている。絶賛されたシーズン1はシーズン2を見てもらうための伏線だったのではと思わせる。『全裸監督』シーズン1・2はドラマ・映画史に残る歴史的大作になったのは間違いない」と絶賛する。

 シナリオ構築を何度もやり直し、スタッフを固めていよいよ撮影という時にコロナ禍が襲い、何度も撮影中断を余儀なくされながら完成を迎えた。
 シーズン1は、村西氏を演じる山田が、一介のサラリーマンから野望をたぎらせてアンダーグラウンドの世界に身を投じ、ビニ本・裏本からAVの帝王に成り上がる成功物語。

 シーズン2は、頂上に達した村西氏が巨万の富を失い、親友を失い、信用も名声もすべて失う悲劇を描いている。

 当時の人気男性アイドルと関係を持った女性の出演作品で、そのアイドルとの関係をパロディーにして発売したことで、大手芸能プロダクションと闘争したエピソードが村西氏にはあるが、そのシーンを実写で再現しているのはネットフリックスならではだ。

 村西夫人の乃木真梨子さんを演じた恒松祐里について「写真で見る美しさが映像でより引き立ち女優向き。清涼感があるので、シーズン2の中でもいい意味で浮いていて大物感があります。気品があるところも乃木真梨子さんと似ています。ニューヒロインの登場ですね」と本橋氏は語る。

「クラブホステスのサヤカを演じる西内まりやと血まみれのトシの満島真之介は、ネオン街のロミオとジュリエットだ。西内まりやは、筑波久子、前田通子で途切れた日本映画の“バンプ女優(毒婦、妖婦)”の命脈を復活させた」とも。

 宮沢りえ、吉田栄作、草刈民代、室井滋、國村隼、鶴見辰吾らが脇を固める豪華さ。刑事事件を起こしたピエール瀧も、パート1に続いて出演するなど、再生工場的な側面も本作品にあることを本橋氏は指摘する。

 かつての人気トレンディー俳優・吉田が演じる、うさんくさい銀行マン役も本橋氏のお気に入りだ。「『村西さんにジャストフィットの案件があります』という村西ばりの英単語シーンは最高。味のある名優として吉田栄作もクローズアップされるでしょう」と語る。

「一番うれしいのは、ネットフリックスが若くて無名の役者や芸人を多数キャスティングして、刑事、カメラマン、通行人などの役を与えたことです。未来と希望を与えたんですよ。シーズン1同様、派手なキャスティングばかりじゃないことを評価したいです」(本橋氏)

 2016年に太田出版から刊行された本橋氏の著書「全裸監督 村西とおる伝」は新潮社から文庫版が今春発売されている。「新・AV時代 全裸監督後の世界」(文春文庫)では、村西氏とその後のAV業界をつづっている。

 長年アンダーグラウンドな世界を描いてきた本橋氏だが、本作品をきっかけに新しい読者も得ているという。