慣例をブチ破る。新日本プロレス「G1クライマックス」Bブロック公式戦(24日、大田区総合体育館)で、タイチ(41)がSANADA(33)を撃破し、開幕2連勝を飾った。プロレス界随一の好角家は、大相撲秋場所の照ノ富士(伊勢ヶ浜)の活躍に感化され、団体内にも新横綱誕生が必要と力説。さらにIWGPタッグ王者としてG1を制覇し、団体内改革を推し進めると公約した。


 全日本プロレス出身者同士の公式戦が、3冠ヘビー級王座誕生の地で実現した。タイチは初代同王者のジャンボ鶴田ばりのジャンピングニー、バックドロップホールドを発射。SANADAのラウンディングボディープレスを回避すると、白鵬式カチ上げエルボーからのブラックメフィストで3カウントを奪った。

 これで開幕2連勝。タイチは今回のG1は自身の〝綱とり〟がかかる大会と位置づける。その闘志に火をつけるのが、大相撲の秋場所で優勝争いを繰り広げる新横綱照ノ富士の存在だ。

「やっぱり刺激を受けるよね。横綱を背負ってから急に横綱相撲になってるというか。強さがまた出てきたし、素晴らしい。相撲もプロレスも一人横綱じゃつまらないだろ。新日本にも新横綱が必要なんじゃないかと改めて思ったよ」

 負傷やコロナ、予期せぬ形で主役が離脱してしまうこともあるだけに、プロレス界も上位層の充実と新陳代謝は必要不可欠と訴える。「現にAブロックは横綱1人いなくなってるでしょ。そろそろ俺の昇進が必要なんじゃないかと。不惜身命(ふしゃくしんみょう)を貫きたい」と語気を強めた。

 ともにタッグ王座を保持するパートナーのザック・セイバーJr.もAブロックで優勝候補を連破し、絶好調だ。熱望するタッグ王者同士の優勝決定戦(10月21日、東京・日本武道館)も現実味を帯びてきた。

 2002年大会の蝶野正洋以来となるタッグ王者でのG1制覇を果たせば、新日本の勢力図と潮流は一変する。近年のG1優勝者には翌年1月東京ドーム大会でのIWGP挑戦権利証が与えられるのが通例で、かつドーム大会のカードが決定済みの選手は年末の「ワールドタッグリーグ」(11月13日、後楽園で開幕)の不参加が続いていた。

 だが、タイチは「俺たちは出るぞ。たとえ俺かザックがドームでの挑戦が決まっても、タッグリーグには出る。タッグ横綱として出場しないわけにはいかないだろ。タッグ王者としてG1で優勝して、そういうものも全部変えていく」ときっぱり。シングル戦線とタッグ戦線の垣根を破壊する改革を提唱した。

 不惜身命の決意に改革宣言と、敬愛する元横綱貴乃花をほうふつとさせる今大会のタイチ。〝名横綱〟への第一歩を踏み出すことができるのか――。