フィギュアスケートの2010年バンクーバー五輪男子代表でプロスケーターの織田信成氏(32)が18日、無視や陰口などのモラルハラスメント行為を受けて体調を崩し、関西大アイススケート部監督を辞任した件で、女性コーチに1100万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

「フィギュアスケート界の悪弊へ一石を投じる思いで、ハラスメント行為を提訴するに至った」という織田氏は提訴後、大阪市内で会見を開き「事実を明らかにするのと同時に、僕にとってすごく大切な場所でもあるリンクで今後、ハラスメント行為がないようにしてほしいという思いで(提訴しました)」と目に涙を浮かべながら話した。

 訴状によると、女性コーチは織田氏が監督就任を承諾した2017年2月ごろから、コーチ間で取り決めたリンク使用のルールを無視し、危険なレッスンを始めた。織田氏が苦言を呈したところ、女性コーチは「あんたの考え方は間違っている!」などと激高。レッスンは中止されたが、織田氏に対し、嫌がらせ、無視を行うようになった。同年4月に織田氏が監督に就任すると、関係者らに「(織田氏は)監督に就任してから偉そうになった」「勝手に物事を決めている」などと噂を流すようになったという。

 モラハラ行為は一度は収まった。しかし今年1月、織田氏がアイススケート部員の練習時間の変更を提案すると、女性コーチはその場では同調したが、直後からモラハラ行為を再開。次第にエスカレートしたため、織田氏は恐怖感や不安を感じて体調を崩し、入院した。

 織田氏にとって女性コーチの存在は「素晴らしい指導者で発言力がある。30歳近く年が離れており、僕は指導者としては未熟者なので、僕の口から何かを言うのは難しい環境だった」。

 そのため、7月に関西大に調査依頼を行ったが、思うような結果が得られず「諦めに近い感情」で9月に監督を辞任。大学については「10月に弁護士の先生から『関西大学はハラスメントの調査を行っていなかった』と報告を受けたが、大学は『ハラスメントがなかった』と発表した。矛盾を感じたし、この件を明らかにする意思がないと判断し、提訴した。真摯に対応してくれれば、ここまでならなかった」と不信感を口にした。