フィギュアスケートの五輪2連覇・羽生結弦(26=ANA)の激動のシーズンが終わった。今季最終戦となった世界国別対抗戦(丸善インテックアリーナ大阪)の男子フリーが16日に行われ、王者のスケーティングを披露。自己ベストの193・76点をマークして有終の美を飾った。

 試合を終えると過去の記憶がドッとよみがえってきた。世界選手権からの激動の2週間を「正直、普通の生活ではなかったですし、気持ちだとか、食事も普通のようには取れなかったんです。ずっと体調が良かったわけではなかったので、ストレスもあったり、かなり疲れもあったり、おなかも壊していたり」と振り返った。コロナ禍の異様な期間を踏まえた上で「そんな中でも良くやったって言ってあげたいような内容だったと思います」と充実の表情を見せた。

 大会前は「誰かの光になれるように」とテーマを掲げた。だが、フタを開けると違った。

「みんなが光だったなって思います。ショートの時もフリーの時も(仲間の)点数を見て、あー悔しかっただろうけど頑張ったんだろうなってことをチームメートの演技をまた改めて感じて、それがある意味、導きの光のようにすごくすごく強い力をくれて、僕が先輩として何とか頑張んなきゃなっていう。ある意味、普通とは違う力を頂けた試合だったと思います」

 この日、後輩の宇野昌磨(23=トヨタ自動車)はミスをしてうなだれていた。「別の選手なら優勝していた」とさえ言ったが、そんな仲間の気持ちが逆に力を与えてくれたのだ。

 今季を振り返り、羽生は「最後の最後までこのプログラムに寄り添って、世界選手権とは違って本当にこのプログラムの曲を感じながら、そして皆さんの鼓動だとか、呼吸だとか、祈りとか、そういうものを感じながら滑ることができたので、ある意味、満足しています」と穏やかな表情を浮かべた。

 羽生の夢には続きがある。誰も跳んだことがないジャンプの完成へ。その希望の光は確実にともっている。